こんにちは、エシカル協会のメディア・コミュニケーターの桑原です。最近は暑い日が続いておりますが、みなさま熱中症など体調は大丈夫でしょうか。水分補給を忘れずに楽しく毎日を充実させましょう!

さて、第3回目の講座では、国立環境研究所、循環型社会システム研究室室長の田崎智さんにお越しいただき【環境・社会配慮と消費行動~もったいないからエシカルまで~】についてお話いただきました。
田崎先生はリサイクルや廃棄をテーマに、持続可能な発展を促進する文系と理系の両分野を股に掛けて研究をしています。他にも家電リサイクル法の見直しの議論に従事したり、東京大学大学院の客員教授も務めておられます。

今回の講座では、環境配慮につながる目標意図や、行動意図を分析することで環境配慮行動やエシカル行動を促進できるようなアプローチについてご教授いただきました。
まず、環境問題はひとことに言っても「水問題」「森林破壊」「大気汚染 」などなど多岐に存在していますが、その特性ごとに三つに分類分けすることができるそうです。

①森林開発、コンクリートによる護岸工事、森林伐採、魚の乱獲、鉱物資源採掘などの自然に対して人間活動が与える環境問題

②PM2.5や地球温暖化による環境ホルモンの変化など、自然への排出物による環境汚染、環境変化

③国際間貿易などによる生物やウイルスの移動ど人間活動が及ぼす生態系や自然環境の広がりや変化

こうした環境問題は年々、深刻化する一方です。2015年に発表された最新のプラネタリーバウンダリー(地球の環境容量を18分野に細分化して深刻度を評価したもの)によると、種の絶滅の速度が、経済社会が誕生する以前よりの100倍の速度で進んでいることが明らかになりました。最近だとアフリカで保護されていたキタシロサイのオスが絶滅したことで世間を騒がせていましたね。このまま何も対策をしないまま時が経った場合、種が絶滅する速度はさらに加速し、現在の10倍、または大昔の1000〜10000倍にまでなるとも言われています。

生物多様性への配慮は今に始まったことではありません。世界的にも重要な課題と認識されており、SNSでも啓蒙を促す投稿を頻繁に目にすることができます。それにもかかわらず、本格的な見直しが進まないのは、なぜなのでしょうか。
田崎先生はこれについて、生物多様性が私たちの経済活動に直接的な影響を及ぼすことが少ないことや、若者の自然への関心低下が原因していると指摘します。実際に平成18年9月に内閣府から発表された「自然の保護と利用に関する世論調査」を見ると、自然環境に対して非常に関心がある20代は全体の11%ほどでした。他にも調査報告からは自然環境への関心は年齢が上がるにつれて高まっていることが読み取れました。

生物多様性が異例の速度で失われていることは理解できましたが、私たちはなぜ種を守っていかなければいけないのでしょうか。田崎先生は生態系がもたらす恵みが薄まってしまうためであると分析します。生態系がもたらす恵みにはそれぞれ供給サービス、調整サービス、文化的サービス、基盤サービスがあり、私たちに食料や水などの資源を供給をしてくれたり、気候の調整、精神的安定や教育的効果、循環や土壌の形成などの恩恵をもたらしています。
これまで人間は環境を犠牲にしながら、自分たちの都合のいいように社会を作り上げてきましたが、このままでは地球も限界を迎え、海面温度の上昇や砂漠化など様々な問題を引き起こすことになるでしょう。地球からポジティブな恩恵を持続的に享受していくためには、私たちは環境保護や環境保全に取り組む必要があります。とある地域では森林開発やコンクリートによる護岸工事には自然保護地域を指定したり、保全活動を促進するような地域指定制度で過度な開発を防いでいます。
また、森林伐採や魚の乱獲に対しては、木を植えたり、稚魚の保護をするなど、経済活動で生じた代償を別の何かで相殺する(オフセット)ことで環境への負担を減らしています。
四大公害や自動車の排ガス問題に対してはエンドオブパイプ(工場などのパイプから大気へ排出される有害ガスを最小限に抑える取り組み)や人間活動の見直しが進みます。外来種や温暖化によるウイルスの増加に対しては流入防止、隔離、ワクチンなどで対策をとっています。

上で記したような環境配慮行動には様々ありますが、環境保護は自然を利用せず傷つけないことを指し、環境保全は保護して安全を保つことができれば自然を利用しても良いという点で異なることも覚えておかなればなりません。

環境問題というと、以前は一部の産業が引き起こした特定の人々に対する問題とされてきましたが、時代の流れとともにその特性は変遷を遂げ、現在は多くの人々が加害者であり、同時に被害者にもなりうるという地球環境問題へと構造が変化しました。その原因の一つに大量消費主義があり、経済が豊かになると同時に、私たちは物質的な豊かさを追い求め、多くのものに囲まれて生活をするようになりました。

ピーター・メンゼルのマテリアルワールド(各国の家庭の物の多さを比較した画像)を参考に、世界でも高い幸福度を誇るブータンの暮らしと経済的に豊かな日本やアメリカの暮らしが比較されていましたが、これらの経済先進国の家屋からは多くの家具や衣類が出てきた一方で、幸福度が高いブータンに住む人々の家からはごく少量の物だけが出てきました。この例からも物質的な豊かさが必ずしも幸福に結びつかないことが見て取れます。しかしながら、アジア・太平洋の国々では2010年から2015にかけて物質的な豊かさを追求する人々が増えているようで、アジアの国々で物質消費量が増加しているそうです。

これまで環境と経済は対をなす関係として議論されてきましたが、今後はこうした二者択一の発想ではなく、Win-Winの関係を見出しすことが大事なのだと田崎先生は言います。トリプルボトムライン(環境、経済、社会への配慮)を達成することが持続可能なビジネスの根幹にあるという考えから、近年では世界中でグリーン経済やESG投資、持続可能なビジネスの追求など、環境配慮型経営への需要が環境変化とともに増加しているようです。
グローバリゼーションにより生産から消費までのサプライチェーンの動きが複雑化したことで、消費者が製品の背景にある環境問題や社会問題について知ることがこれまで以上に困難になりました。

2016年には産業革命以前に比べ、1.1℃高い温暖化記録を更新したことや、都市部の9/10人がWHOの大気質ガイドライン基準を満たさない空気を吸っていること、2013年には世界で31%の水産資源を過剰漁獲していることや、2010年には東・東南アジアが世界の42%の物質を利用していることなどなど、私たちの生活が地球に過剰な負担をかけている実態があります。

エシカル消費はその製品が与える社会や環境への影響や生産背景にいる人々に配慮して作られたもののことを指しますが、こうした製品の需要は社会環境の変化とともに今後ますます増加することになるでしょう。この消費スタイルを消費者が認識するようになるには、まずは問題認識が第一歩であり、私たち消費者が企業に対して情報開示を訴得ていくことがエシカル消費普及の近道なのだそうです。
また、私たちはリサイクルという方法で消費を通じて環境配慮をすることができます。リサイクルとは一般的にゴミを分別して捨てることや資材回収に貢献することを指しますが、リサイクルされた製品を購入することも立派なリサイクルです。リサイクルされた資源を使って需要がない製品を作ってもそこにマーケットがなければ意味がありませんから。収益性も考慮することで初めてトリプルボトムラインが達成できるのです。

今後私たちがエシカルな取り組みを普及するために、私たち一人一人が何ができるかという議論を行い、今回の講座は終了しました。

今回も長くなってしまった講座レポートでしたが、いかがだったでしょうか。なかなかアカデミックな内容だったので、理解するのに時間がかかってしまいそうですが、どれも本質をついたものばかりで、個人的にはエシカル消費の行動意図の分析は自分にとっては大変興味深いものでした。講座に参加された方にはプレゼンテーション資料も合わせて配布しておりますので、そちらもご参考にしながら講座を振り返っていただけたらと思います。

次回の第4回講座ではETHICAL FASHION JAPAN代表で、Fashion Revolution Japan co-ordinatorとしてもご活躍なさる竹村伊央さんに【私の服は誰がつくったの?ファッションで考えるエシカルな形】についてごお話していただきます。

第4回
6/9 (土曜)【私の服は誰がつくったの?ファッションで考えるエシカルな形】
竹村伊央さん(ETHICAL FASHION JAPAN代表、Fashion Revolution Japan co-ordinator)
https://gicz.jp/open/2018sp1/index.html

では!