こんにちは、メディアコミュニケーターの桑原です。
梅雨が明けて本格的に夏到来という感じですね。 気持ちのいい天気が続いたかと思えば、中国地方を集中豪雨が襲い、甚大な被害がありました。ため池が決壊して更なる洪水が起こる二次被害も発生しており、とても心配です。被害に遭われた方々には心からお見舞い申し上げます。

さて、第5回目の講座では認定NPO法人アニマルライツセンター代表理事の岡田千尋さんにお越し頂き、「エシカル消費と動物への配慮とは」をテーマにお話いただきました。

アニマルライツセンターは、主に人間の支配下で苦しむ動物の苦しみを解放するために活動を続けている認定NPO法人です。動物との穏やかな共存を目指しています。

まず、アニマルライツとは動物がその動物らしくいられる権利のことで、人間が動物を管理・利用することを前提にするのではなく、動物本来の生態・欲求・行動を尊重することをいいます。しかし残念なことに日本では動物の本来の姿を否定するようないい加減な飼育や管理がされていることが多いそうです。例えば、とある動物園で飼育されていたチンパンジーの檻は10畳ほどのコンクリート詰めで、遊具はぶら下がったタイヤ一本のみという非常に簡素な状態でした。

本来、チンパンジーの遺伝子は人間に近いと言われており、普段は20〜100匹ほどで集団生活をしたり、その中には階級社会があったり、仲の良いグループができたり、仲間同士で駆け引きをしたりするなど、人間と同じくらい感情表現が豊かです。稀に戦争をしてしまうような残酷な一面や、大事に子育てをする一面なども持ち合わせており、人間に劣らず多様な習性を見せる動物です。

私たちの多くは、これまでの人生で当然のごとく自由に走り回って、友人と遊んで、恋をするなど充実した日々を過ごしていますが、動物園で飼育されているチンパンジーの多くはそれとはかけ離れた狭く退屈な檻の中に閉じ込められているのです。

岡田さんはこの事実に強い衝撃を受け、人間の支配下で苦しむ動物の苦しみを解放するための活動を始めるようになりました。

悪事を働き牢屋に入れられている囚人でさえ、知人との手紙や面会、隣の独房の囚人との会話など、制限されながらも最低限のコミュニケーションを楽しみにしているというのに、動物園の動物たちはそれすらも許されていなかったのです。

とくしま動物園には二頭の象がいました。マギーとランガです。二頭は同じ時期にこの動物園にやってきたのですが、2008年にランガが死んで以来、残されたマギーは約10年間、他の象とのコミュニケーション取ることなく孤独な生活を送っていました。
日本ではまだまだ取り組みが遅れていることですが、世界のスタンダードとしては年老いたゾウはサンクチュアリと呼ばれる擬似自然保護区に移されます。ここではゾウの本来の習性を尊重した環境で余生を快適に過ごせるように配慮されている施設です。人間でいうところの老人ホームといったところでしょうか。幸いなことにマギーも国内では最高レベルのサンクチュアリに移されることになったそうですが、国内最高といわれるこの施設でさえも、海外のサンクチュアリと比較すると生態学的な必要が十分に満たせていないと批判されており、日本はまだまだアニマルウェルフェア途上国だということが思い知らされます。

動物園やサンクチュアリ以外にも、近年注目を集めるフクロウカフェも海外からの批判の対象になっています。フクロウカフェとはフクロウやミミズクなど猛禽類と触れ合えるカフェのことを言いますが、ここでは動物の飛行を防ぐために足に鎖がかけられています。言わずもがな、人間(お客さん)に危害が及ばないための対策ですが、人間の都合のいいように動物の自由を制限、またはコントロールする行為がヨーロッパからの観光客から虐待だと批判されています。

さらにニュースでは年に数回、山から動物が降りてきたことが報道されますが、そのたびに地元の人々は恐怖に怯え、保健所や警備隊が躍起になって捕獲、駆除しています。たとえ体の小さい動物であっても恐怖からか、遭遇した本人には実際よりも大きく見えてしまうようで、ニュースでは事実を誇張したような発言も見かけます。一昔前は私たち人間が、山にお邪魔するという立場であったのに、いつから人間はコントロールすることのできない動物に恐怖を怯えるようになってしまったのでしょうか。

アニマルライツセンターは動物との共存を目標にアニマルウェルフェアを向上する活動を続けています。

しかし、私たちはこれまで動物と触れ合うことで動物への理解を育んできました。こうした教育活動も妥協せずに動物たちにとって理想的な環境を作りあげることなどできるのでしょうか。実は、映像の力で動物との触れ合いを実現しようとするプロジェクトがあります。ライトアニマルと呼ばれるこのプロジェクトは屋外、屋内の壁面にクジラやイルカを実物大で投影するもので、捕獲を望まない水族館や博物館に勧められています。広大なシステムや広い敷地、大型設備や多くの人員も、複雑な許諾も必要ないこのシステムは病院などの医療施設や養護施設でも展示することができるため大変注目されています。

とある動物園では動物のエンリッチメントを高めるために、消防ホースをアップサイクルしたハンモック作りをしています。動物行動学を尊重し、クマ本来の動きを再現できるようになっています。

動物の生態・欲求・行動を尊重し、本来の動きを実現できるように配慮することは、もはや世界のスタンダードとして求められています。大型の動物も無理やり移動させるのではなく、映像やテクノロジーの力で再現することで、教育と動物配慮の両方を妥協することなく目的を果たすことができます。動物を支配しようとするのではなく、尊重しながら共存することが今後はさらに重要視されていくことでしょう。

動物園だけでなく畜産動物が虐待を受けているケースもたくさん存在します。
採卵鶏を例に挙げるとバタリーケージと呼ばれる檻に閉じ込められ、首を動かす以外の自由を奪われています。人間が効率よく卵を収穫するために考え出されたシステムですが、鶏も他の動物同様、本来の生態や行動を持っており、砂浴びをしたり、足で穴を掘って土の中にいる虫を食したり、仲間から隠れて卵を産んだり、オスはメスの出産を守ったりします。日本の工業的畜産ではそうした動物の行動欲求を完全に無視し、動物たちの自由を奪います。劣悪な環境に入れておきながら死ねばすぐに焼却炉に放り込んでしまうこともあるようで、命をぞんざいに扱うところから日本の畜産業は完全に工業化していると言えます。

デビーキングという生まれたての雛鳥のくちばしを切除したり、と畜場での夜間放置が原因で野生動物から無防備に攻撃を受けてしまったり、意識が残ったまま熱湯処理をしたり(欧米ではスタニングと呼ばれる気絶処理をすることが義務付けられている)と、ずさんな管理は未だに残っており、現場で働く労働者の意識改革は不十分です。

幸いなことに海外では大手企業を中心にバタリーケージの使用を廃止する動きが進んでおり、欧米やインド、ブータンなど多くの国でケージフリー化が進んでいます。しかしその一方で、 日本ではこれを廃止する動きが一向に見えてこない現状があり、とても残念です。

ヨーロッパのスーパーマーケットでは当たり前に平飼いの卵を購入することができ、そのためのコーナーも設けられているのですが、日本で平飼い卵を購入しようとするとインターネット、または限られた店舗でのみの販売となっています。畜産における動物保護レベルでは日本は中国やブラジルよりも低いランクに位置づけられているそうです。

乳牛や豚の飼育でも日本ではアニマルウェルフェアに反した管理がされているようで、動物の自由を拘束したり、母親から子どもを取り上げたり、母親の目の前で子どもの角や尾っぽを無麻酔で切除したりと無慈悲なシーンが多く見られます。

畜産と持続可能性は密接に結びついており、Worldwatchによると畜産によるCo2 排出量は325億6400万トンあり、年間総排出量の51%を占める地球温暖化の最大の原因だと言われています。特に搾乳牛がもっとも地球温暖化ガス排出するようで、Co2の25倍もの地球温暖化効果があるといわれているメタンガスを一頭あたり132kg/年も排出するようです。畜産動物による地球温暖化効果は配布されたプレゼンテーションを参照していただきたいのですが、数値だけでも食肉が占める地球への温暖化効果や森林破壊の問題など、食肉と自然環境は関連性がかなり高いことがわかります。

こうした中、ポール・マッカートニーがミートフリーマンデーというキャンペーンを打ち出したり、ヴィーガンフレンドリーな学校が急増したりと意識のある層から少しずつ変化が起こっています。日本のベジタリアン、ヴィーガンの人口は海外と比べて多いとは言えませんが、アニマルライツセンターの調査によるとアメリカとほぼ同じ割合で、少ないとも言えないようです。その証拠に東京大学や京都大学をはじめとする多くの大学でヴィーガンメニューが開発されたり、畜産物を一切使わないメニューを提供するレストランが次々に誕生したり、大豆ミートを販売するスーパーマーケットが増えてきたりしました。

アニマルライツセンターは人間の支配下で苦しむ動物の苦しみを解放するだけではなく、アニマルウェルフェアを通じて、動物の生態に配慮した飼育環境の構築や、環境問題の解決にも取り組んでいます。今回の講座で日本のずさんな飼育環境を知り衝撃を受けたとしても、昨日まで肉食であった多くの私たちにとって、明日からすぐにベジタリアンやヴィーガンになることはそう簡単なことではありません。しかし少なくともミートフリーマンデーを実践し、一週間に一度でも食肉を控え、動物のことを考える日を設けることもできます。卵を買う際はバタリーケージのものは選ばずに、平飼いのものを選ぶなどバイコットをすることで、動物に配慮した畜産農家のポジティブな変化を応援することができます。私たちには一日3回、未来と動物を救うチャンスがあるのです。

今回のレポートも少し長くなってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
次回の講座は7月14日(土)、株式会社ワンプラネット・カフェ取締役、サステナビリティ プロデューサーのペオ・エクベリさんをお呼びして、【Sustainability in Reality – サステナビリティを形にしよう!〜スウェーデンとザンビアでの取り組み〜】をテーマに講演していただきます。
ワンプラネット・カフェはフェアトレード製品の生産や、バナナペーパーの生産を行っており、実はエシカル協会で使っている名刺もこのバナナペーパーを使っています。講師としてお呼びするのは今回が初めてなので、どのようなお話をお聞きすることができるのか、今から楽しみです!

それではまた次回の講座でみなさまとお会いできることを楽しみにしています!