消費行動の変化


 消費者がエシカル消費を意識し始めたのは最近ではありません。倫理的消費者を意味する“ethical consumer”という雑誌は、1987年英国のマンチェスターで発刊されました。その使命は消費者の行動で国際的な企業にエシカルな経営と製品の生産、提供をさせることでした。エシカルな企業の製品を消費者が積極的に購入し、同時にエシカルに生産されていない製品を購入しないボイコットという手段も選択されました。例えば、オゾン層の破壊の原因となるフロン使用製品のボイコットなどです。

 日本では、2010年頃から「エシカル」という言葉が徐々に使われ始めました。2010年9月に「エシカル」というキーワードでグーグル上検索された件数は、4.6万件。2011年東日本大震災以降、社会貢献の意識が日本中で強くなり、2015年10月にはその件数が44万件にも増え、時代を読み解く消費のキーワードとして、新しい風潮の兆しをみせています。(株式会社デルフィスの意識調査より)

 昨今、消費者が積極的にエシカル消費をする社会は、「消費者市民社会」と呼ばれ、政府もそうした社会づくりを後押しするために、「消費者教育推進法」を2012年に制定しました。また、2015年5月には消費者庁によって「倫理的消費」調査研究会が設置され、広い角度からエシカル消費の拡大による消費者市民社会の形成を検討しています。

エシカルな事業

エシカルな事業の必要性


日本の企業

 消費者がエシカルを意識して消費を始める中で、企業としてエシカルな事業を継続して行うことは今後とても大切なことになります。欧米では、企業の倫理的な経営や生産を評価する第三者機関が重要な役割を果たしており、日本でも同じような機関がまもなく登場するでしょう。

 2015年9月に、国連が「持続可能な開発目標」を採択しました。2030年までに17の目標を掲げましたが、そのうちのひとつは「持続可能な生産消費形態を確保する」です。また、「包摂的かつ持続可能な経済成長およびすべての人々の完全かつ生産的な雇用と適切な雇用を促進する」という目標の中では、強制労働や児童就労の禁止と撲滅を保証する、と宣言してあります。この歴史的な決意が、すべての国々、すべての利害関係者が協力的パートナーシップのもと採択されました。日本の企業もこの目標を達成することを前提に事業を進めることが求められています。

消費者の意識の変化


 昨今、日本でも身近な「安全」「取引」「表示」の分野で多発している、企業の倫理的ではない行為、例えばマンション杭打ちデータ偽装、自動車排ガス違法ソフト開発、期限切れ鶏肉食品の輸入、有機肥料偽装販売などによって、消費者は大きな不信感を抱いています。

 世界でも様々な問題が起こっています。2014年4月に起きたバングラデシュにあるラナプラザ縫製工場崩壊事故では、約1130人以上の生産者犠牲となり亡くなりました。従業員3639人のうち約8割は、18歳から20歳の若い女性で、見習いは1時間12セントという低賃金で1日13時から14時間働かされていました。この工場では、欧米で販売される人気のファストファッションのブランドの洋服が作られていました。欧米ではこの事故のニュースが連日取り上げられ、消費者たちは安価なファッションの裏側を知り、大きなショックを受けました。

 2015年1月にピープルツリーが実施した調査によると、2013年4月に起きたバングラデシュの縫製工場ラナプラザの崩壊事故がきっかけとなり、ドイツ語圏とイギリスの中流階級の女性におけるエシカルとフェアトレードの認知度は80%に到達しました。アパレル業界の透明性の欠如に対する不安を理由に、多国籍企業、ファストファッション、個人経営の店舗が苦境に追いやられています。イギリスの消費者の78%は、衣料企業がサプライチェーンにおいて職場の環境や従業員の賃金について透明性があるとはいえないと考えており、また、会社は商品が生産される環境や労働者の賃金について透明性をもつべきであり正直でなければいけないと考えています。さらに、74%は、労働者が公正な賃金を支払われ安全な環境で働いていることが保証されれば、その商品に対し5%価格を上乗せしてもよいと言っています(YouGov/Global Poverty Project)。※Fair Trade Newspaper vol.3 より

 イギリス、ドイツ語3圏(ドイツ、オーストリア、スイス)において、従来型のセレクトショップは軒並み低迷しており、「背景のストーリーを語る」、「透明性を高める」、「作り手と買い手を繋ぐ」といった、フェアトレードやエシカルを打ち出したコンセプトストアがそれらにとって代わるという現象が起きています。その背景には、20代から40代の女性を中心とした消費者の意識変容が挙げられます。現在、ドイツ語3圏、ベネルクス、スカンジナビアにあるコンセプトストアは約200店舗ですが、潜在的には2,000店舗以上のポテンシャルがあると言われています。コンセプトストア、つまり「エシカル」をキーワードにした店が欧米を筆頭に世界的に台頭することが予想されます。

 さらに、若年層のエシカルな企業を支持する率も毎年高くなっており、2013年に大学生300人を対象に調査をした結果、93%が「フェアトレード実践企業の商品を買ったり、人に薦めるなどしたい」と答えています。(NPO法人フェアトレード・ラベル・ジャパンによる意識調査)また、2015年12月に一般社団法人全国消費者団体連絡会が日本生活共同組合連合会の組合員を対象に行った意識調査では、エシカル消費の動機として「問題があるとわかっていながら無視したくない」と答えた20代が23%を超え、他の年齢層と比べて最も高くなっています。エシカルはもはや、企業にとって必要不可欠な要素と言っても過言ではありません。

エシカルな企業のメリット

エシカルな企業になるとどんなメリットがあるのでしょうか。一般社団法人エシカル協会では5つのエシカルな事業を行うメリットをあげています。

企業が持続可能な事業を末永く継続していくための戦略の大きな柱になる。
消費者がサプライチェーンの透明性を求めるようになり、エシカルな企業を選択する時代に突入している。
10年後には消費活動の、ひいては社会の中心となる、現在の10代、20代がエシカルな企業を求め支持する時代に突入している。
持続可能な事業を経営するエシカルな企業のパイオニアになることが、大きな武器や強みになる。
エシカルな事業はマーケティングの手法ではなく、企業の事業目的(ステートメント)を表すわかりやすく有効な手段である。