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【エシカル・コンシェルジュ名鑑】

#26 心身を整え、自分を活かす。ヨガで紡ぐエシカルな生き方
古代ヨガ講師の\ 菊地詩織さん/

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「エシカル・コンシェルジュ名鑑」では、日本全国・世界各国にいるエシカル・コンシェルジュを紹介します。講座を受講したきっかけや、職種、興味のある分野は人によって様々です。どんな仲間がいるのか、どんな活動をしているのかぜひ参考にしてください。

第26回目は、5期修了生の菊地詩織さんです。心の調子を崩して休職していた期間中に、「人の心身が癒えた時、あらゆる問題がなくなるのではないか」という考えに辿り着いた菊地さん。一度はヨガの道を離れたものの、様々な経験を経て再びヨガ講師として活動を再開しました。今は、自らの実践を通して、ヨガを通じたエシカルな生き方を伝えています。

::プロフィール::


菊地詩織
就職を機にヨガに出会い、ホットヨガスタジオに入社。インストラクターとして年間400本以上のレッスンを担当する。自身の体調不良をきっかけに、リフレッシュのために訪れた奄美大島で、“自然と調和した生き方” が心身の健康に良い影響を及ぼすことを実感。現在は、自然豊かな神奈川県大磯町に暮らし、「心身ともに健康で、心から幸せな人を増やす」ことをミッションに、東京・神奈川を中心にヨガ講師として活動している。
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【衣】
パタゴニアTシャツ:
エシカルを知って1番最初に買い物したものが、パタゴニアのTシャツでした。パタゴニアは、自然環境や人への配慮がされているものばかりで気持ち良く着られるので好きです。首元がファンデーションで汚れてしまい、なかなか落ちずに「もう雑巾にするしかないかな……」と思っていましたが、ダイダイ染めをしたら大復活!さらに愛着の湧く1枚となりました。お気に入りです。(左)

【手作り】
季節の手仕事
:今年はご近所さんに分けていただいた梅で初めて梅干し作りをしました。何でも作れるものは作ってみると楽しいし、より有り難みを感じます。〈梅を干している竹ザルは古道具屋さんにて500円で購入したもの。新品ではなく誰かから受け継いだものがお家の家具や食器類でも多いです〉(右)

奄美大島で大自然の恵みや人との温かい繋がりを体験


私は幼少期からダンスを習っており、身体を動かすことが大好きでした。大学卒業後はホットヨガインストラクターとして働き始めましたが、無理をしすぎて体調を崩してしまいました。そのことがきっかけとなり、リフレッシュのために訪れた奄美大島での経験が、私の人生において大きなターニングポイントとなりました。

例えば、「太陽が昇ったら起きて、日が沈んだら眠る」といった自然のリズムに沿った生活。食べ物は、「漁師のおじさんが突いた魚や仕留めた猪」、「ご近所さんが大切に育てた畑の野菜」をお裾分けいただいたり、木になっている野生のグァバをもいで食べたりしました。

このような大自然の恵みや人との温かい繋がりを体験するなかで、「自分が求めている生き方や暮らし、本質的な幸せとは、こういうことなのかもしれない」と感じました。

奄美大島で海を眺めながらハンモックで寝ているところ


そんな奄美大島での経験を経て地元の横浜に戻ると、何でも大量生産・大量消費される社会や、自然が汚されている現実、そして人がたくさんいるのに人間関係が希薄であることに、大きな違和感を覚えました。その後、ヨガインストラクターを辞めて、大好きな海が見えるカフェで働き始めました。

ちょうどその頃、「クジラが海岸に打ち上げられ、胃の中から大量のプラスチックごみが見つかった」というニュースを目にし、強い衝撃を受けました。人間が普通に生活しているだけで自然が汚れ、動物たちが苦しむ現実が耐えられず、「自分にできることはないか」と考えるようになり、環境問題に関する本や情報を夢中で読むようになりました。

知れば知るほど危機感と悲しみが募り、節電やごみ拾いなどを実践してみたものの、「自分にできることは本当にこれだけなのか」とモヤモヤしていました。そんな時、里花さんの著書『はじめてのエシカル』に出会い、「私にできることはたくさんある」と知りました。

その後、エシカルフェスタが開催されることを知り、勇気を出して参加してみました。会場で多くの人や活動に触れるうちに、「私にできることをもっと知りたい」と強く思うようになり、エシカル・コンシェルジュ講座を受講しました。

一人で頑張りすぎないように 仲間と一緒に行動しよう


どの講座も本当に良かったのですが、特に衝撃を受けて印象に残っているのはアニマルライツセンターの岡田さんの講座です。当たり前のようにいただいていた牛乳やお肉、卵。当たり前のように着ていた衣類のウール。それらがどのような環境で生産され、私のもとに届いているのか――。その事実を知ってからは、しばらくお肉が食べられず、ベジタリアン生活を送っていました。

他の講座で学んだことも日々の暮らしに取り入れ、試行錯誤しながらエシカルな生活を実践していきました。例えば、物を買うときには「本当に必要かどうか」をしっかり考えて見極め、できる限りエシカルなものを選ぶようにしています。そのおかげで、生活はとてもシンプルになりましたが、お気に入りのものに囲まれていて、心から豊かさを感じています。

また、町や海のごみ拾い活動に参加したり、それらの企画をしたり、SNSでエシカルな情報発信をしたりもしました。当時働いていたカフェでは、プラスチックスプーンを金属製スプーンに替えたり、プラスチックストローを紙ストローに変更する提案を行ったりもしました。

ビーチクリーン&ビーチヨガを企画した会の様子


さらに、エシカル協会のお手伝いとして、里花さんと一緒に消費者庁を訪れ、子どもたちに向けたエシカルの啓発活動をサポートさせていただいたこともあります。このように、「どんなに小さなことでも行動しよう」と思い、その時の自分にできることをコツコツと続けていました。

当時は「あれもこれも」と頑張りすぎてしまうこともありましたが、もし今、同じように一人で頑張っている人がいるなら、「一人で抱え込みすぎないで」と伝えたいです。里花さんがよく仰っているように、「一人の一歩よりも百人の一歩」。仲間を増やし、一緒に行動していくことこそが、エシカルを継続していくための大切なポイントだと思います。

私自身も、講座で様々な問題を知ってショックを受け、悲しみや怒り、虚しさなど色々な感情に揺れましたが、それを共有できる仲間の存在にとても救われました。

5期のメンバーで久しぶりに集まった時の様子

自分という存在を尊いと思う人が増えることで、あらゆる問題が根本から優しく覆されていく


講座を受講してから半年ほど経った頃、カフェの仕事を辞めて家業に入り、人生で初めて事務の仕事をすることになりました。家業の業種はあまり興味のない分野でしたが、物心ついた頃から「いずれは家業に入る」と意識していたため、このまま関わらずに人生を終えるのは後悔が残ると感じたのです。

また、カフェでの仕事はアルバイトだったこともあり、エシカルな提案をしてもなかなか上の立場の人まで届かず、できることはやり切ったという思いもありました。こうして新しい世界に思い切って飛び込んだものの、小さい頃から身体を動かすことが大好きだった私は、1日8時間座っていることに耐えられず、次第に心の調子を崩してしまいました。そして、休職することになります。

休職中は、心療内科に併設された「リワークデイケア」という、心が疲れた人が復職に向けて通う場所に通い、臨床心理士の先生のもとで心の勉強をしました。この期間、自分の「好きなこと・嫌いなこと」「得意なこと・苦手なこと」にとことん向き合い、心身ともに健康で、自分を活かして心から幸せに生きることが何より大切だと実感しました。

そして同時に、「人の心と身体が癒えたとき、あらゆる問題はなくなるのではないか」という自分なりの考えに辿り着きました。例えば、食べ物を平気で粗末にしてしまう行動の裏には、食べ物があることが当たり前になり、感謝の気持ちを忘れてしまっていることがあるのかもしれません。

また、次々と新しいものを買い集め、飽きたらすぐに捨ててしまうような行動の背景には、「あの人はいつも新しいものを持っていて凄い」と思われたいという心理が潜んでいるのかもしれません。

ヨガでは、自分の心と身体を丁寧に観察していく中で、自分の生活習慣や思考の癖、言葉や行動、人間関係、そしてあらゆるものとの繋がりに思いを馳せていきます。そうして「すべては繋がっている」と思い出す人や、「自分という存在そのものを尊い」と感じる人が増えることで、あらゆる問題が根本から優しく覆されていく――私はそう信じています。

このような考えに辿り着いたことから、現在は再びヨガ講師として活動しています。

この身体を持って生まれてきたらには、もっと可能性を見てみたい


現在、私が講師としてお伝えしているヨガは「クレンズヨガ」といって、南インドで数万年の古代から口伝でのみ継承されてきたヨガです。一般的なポーズを取るヨガとは異なり、独特な呼吸法と動きで身体の内側を大掃除するように整えていきます。

このヨガに惹かれたのは、自分の身体が想像以上に動くことに衝撃を受けたからです。現代の生活では、思考も身体の機能も本来持っている力を生かしきれていないことに気づきました。せっかくこの身体を持って生まれてきたからには、その可能性をもっと見てみたい。そして、その可能性があることを周りの人にも伝えていきたいと思いました。

現在、「クレンズヨガ」は金沢と渋谷にあるクレンズヨガ専門スタジオ「ミルガ」で受けることができます。私は渋谷の店舗でレッスンを担当しながら、個人でも鎌倉でクラスを行っています。興味を持ってくださった方がいらっしゃいましたら、ぜひ体験していただけたら嬉しいです。

ヨガとエシカルを考えると、重なる部分がたくさんあります。例えば、「足るを知る」という教えや、自分や他者に対して暴力的にならない「非暴力(アヒンサー)」という考え方は、どちらもヨガの根本にある教えです。それらは、エシカルの根底にあるマインドとも深く通じ合っていると感じます。

今後もまずは、自分自身がヨガを実践し続けていきたいと思います。そして、まだ抽象的な夢ではありますが、いつかヨガをベースに、自然の手仕事など色々なワークショップを行えるスペースを創りたいです。そこでは「様々な繋がりの中で生かされている」「自分はそのままで十分だ」と感じられるような、心がほどける場所やきっかけを生み出していけたらと思っています。

鎌倉古民家ヨガの様子

文:大信田千尋(一般社団法人エシカル協会)
2025/11/12

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