河原直希さん
Kawahara Naoki
#27
「エシカル・コンシェルジュ名鑑」では、日本全国・世界各国にいるエシカル・コンシェルジュを紹介します。講座を受講したきっかけや、職種、興味のある分野は人によって様々です。どんな仲間がいるのか、どんな活動をしているのかぜひ参考にしてください。 第27回目は、12期修了生の河原直希さんです。金融機関で働いていた河原さんは、講座をきっかけに「自然農」に強く惹かれ、和歌山へ移住して農業の道へ進むことを決意しました。現在は「橋本自然農苑」で研修を受けながら独立を目指し、将来は自然農を広め、環境再生に寄与する取り組みをしていきたいと考えています。
profile プロフィール
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こんな活動をしています
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おすすめのエシカル
【食】
橋本自然農苑の野菜セット・GRASSの野菜セット:農業研修をさせていただいている「橋本自然農苑」の野菜セットと、「橋本自然農苑」で研修を経て独立した農家集団「GRASS」が作る野菜セット。どちらも全て無肥料・無農薬の自然農法で作った、人にも地球にも優しい野菜です。それぞれのサイトから注文可能です。
「橋本自然農苑」で研修を経て独立した農家集団「GRASS」が作る野菜セット
【ファッション】
シサム工房:京都に本社を置くフェアトレードショップ。労働者の権利や地球環境に配慮した運営をされています。5年以上前に購入したオーガニックコットンのニットはいまだに愛用しています。
直感の赴くままに 金融機関から農業へ転職
私は京都で生まれ、新卒で京都の信用金庫に就職し、個人や法人向けに営業活動をしながら、お客さんの事業課題を解決する本業支援などを行っていました。ちょうど就職した年に会社が「SDGs宣言」をしていたこともあり、色々調べるうちに環境問題に興味を持ちました。本を読んだり勉強したりする中で『サピエンス全史』に出会い、人間が地球環境に大きな影響を与えてきたこと、そして環境を破壊してきた歴史があることを知りました。
なんとか地球環境を回復させる方法はないかと環境保全について調べていくうちに、エシカル・コンシェルジュ講座に出会い、12期を受講しました。講座の中で、土壌の健康、動物福祉、社会的公平性を3つの柱とし、それぞれに高い基準を設けた総合的な認証「リジェネラティブ・オーガニック認証」の話があり、そこから「自然農」という農法があることを知りました。
直感的に「自然農をやりたい」という思いが生まれ、2025年3月に信用金庫を辞めて和歌山へ移住しました。同年8月から「橋本自然農苑」で農業研修という形で自然農を学んでいます。2年間の研修を経て独立する予定です。金融機関から農業という全く異業種への転職だったため、様々な準備が必要でしたが、家族にもきちんと納得してもらい、農業の道へ一歩踏み出すことができました。

環境を再生していく方法を知り「自然農」の世界へ
環境問題に興味を持ってからは、気候変動や食品ロスなど幅広いテーマに関心がありましたが、妻が体調を崩したことをきっかけに、添加物を気にしたり、調味料を変えてみたり、食べるものや健康など「食」から自分の生活に取り入れるようになりました。
その頃、Instagramの広告でエシカル・コンシェルジュ講座の「若者・学生応援企画(12期は学生&29歳以下が対象)」を見つけ、とりあえず申し込んでみようと思いました。全10回の講座では「エシカル」について幅広く、深く学ぶことができ、とても有意義な時間でした。
特に印象に残っているのは、パタゴニア・インターナショナル日本支社 パタゴニア プロビジョンズ ディレクターの近藤勝宏さんによる【食と農業で地球を救う 〜アウトドア企業パタゴニアの取り組み〜】の回です。
それまでは環境問題を「環境破壊が進む中でどう食い止めるか」「これ以上深刻化させないために何をするか」という視点で捉えていました。しかし「リジェネラティブ農法」のように“環境を再生していく”方法があると知り、大きな衝撃を受けました。先ほど述べたように、これが転職のきっかけとなりました。
人類の歴史では、土を耕起することで表土が砂埃や洪水で流れ、どんどん劣化し、作物が作れなくなると新しい土地へ移動する、ということを繰り返してきました。リジェネラティブ農法の具体的な手法である、耕さずに栽培する「不耕起栽培」は、地球環境の再生という観点でも、土の構造を壊さないという点でもメリットがあると感じました。
私も「不耕起栽培」をやりたいと思いましたが、「リジェネラティブ農法」は、日本ではすでに有機JAS認証を取得している農家向けに「不耕起栽培」を推奨する印象がありました。とても良い取り組みですが、私が一から有機JASを取得し、さらに「リジェネラティブ・オーガニック認証」も取得するとなると、時間も費用もかかり、最終的に野菜の価格が高くなってしまうと思いました。
そんな中、肥料も農薬も使わず、自分で種を取り、未来にしっかり残していく農法があることを知り、「これだ!」と直感しました。自然農についての本を読んだり、自然農を行う農家に農業体験に行ったりして、自然農を実践するための行動を始めました。そして調べる中で、自然農にも様々なスタイルがあることを知りました。
今学んでいる「橋本自然農苑」の自然農は、肥料や農薬を使わず、自家採種を行うこと、そして自然順応・自然尊重といった、できる限り自然に寄り添う農法が特徴です。土と水と種さえあれば野菜が育つことに驚きました。耕起はしますが、「耕起と不耕起は同じものの程度の違いであり、それは時間である」ということも学んでいます。今後2年後、私がどんな農法で農家をしているかは分かりませんが、色々な視点を持ちながら学んでいきたいです。

幸せのあり方が変化 軽自動車で日本一周の旅
エシカル・コンシェルジュ講座受講後は、エシカルを広めたいという思いで、信用金庫に勤めながらできることを実践していました。しかし講座の中で、経済思想家で東京大学大学院総合文化研究科准教授の斎藤幸平さんがお話しされていたように、大量生産・大量消費で経済を回す資本主義と地球環境の保護には相反する部分があると思うようになりました。
実際、本質的に環境問題へ向き合おうとすると、信用金庫の枠組みの中でできることには限界があると感じました。そのプロセスの中で自然農に出会い、これこそが本質的に環境改善につながるものだと感じました。また同時期に日本神話『古事記』に興味を持ち、日本に住んでいながら日本の文化や歴史をほとんど知らないことに気づき、「日本人としてどう生きるか」「自分にとっての幸せとは何か」を考えるようになりました。
信用金庫を退職した後、妻と一緒に軽自動車で3ヶ月ほど車中泊をしながら日本一周の旅をしました。今後の人生の軸を探しつつ、日本神話ゆかりの神社を巡ったり、日本古来の暮らしを見たり、日本の絶景を楽しんだりしながら、日本の良さを再発見する旅でした。
こうした行動ができたのも、資本主義的なお金中心の価値観ではなく、精神的な豊かさに軸を置くことで生き方が変わると実感したからです。旅の途中では、食事中に相席した方や農家さんなど多くの方と出会い、仕事重視ではなく家族との時間を大切にする働き方を選んでいる人の話を聞くなど、様々な人生観に触れました。とても楽しい旅でしたし、幸せのあり方が大きく変わり、今後の人生の糧になりました。



独立を見据えて考えていること
「橋本自然農苑」で雇用研修という形で学び始めて3ヶ月ほど経ちました(2025年11月現在)が、毎日がとても楽しいです。朝日が昇れば働き、日が沈めば休むという自然のリズムの中で生活することに大きな幸せを感じています。私を含め20代2名、40代4名の計6名の研修生と共に学びながら、それぞれの将来について語り合えることも、とてもワクワクする良い環境だと感じています。
「橋本自然農苑」の代表は「自然農をする人を自分の代で1,000人増やしたい」という思いで研修生を受け入れています。研修生が独立し、さらにその人が研修生を受け入れることで、自然農を広げていく流れを作ることを目標としています。「土が綺麗になれば世界が平和になる」というスローガンのもと、「肥料や農薬を使わずに土を清浄に保ち、健康な野菜を育て、それを食べた人も健康になる」という想いに深く共感しています。
私も将来は野菜全般とお米を作りたいと考えており、現在は自宅の庭や研修生畑で野菜作りを実践しています。土が本来の力を発揮すれば、どこでも野菜は育ってくれます。でも土の状態が良くないと生育が悪かったり虫が来たり病気になったりするので、土が本来の力を発揮できるように、肥料を足すのではなく、生えている草のすき込みや、タイミング良くトラクターを入れることで土の状態を整えることが大切です。
土の中には、まだ科学的に解明されていない部分も多く、難しさもありますが、それをどう自分の経験として落とし込み、理解していくかを探りたいです。本来は人間が何もしないのが一番良いのかもしれませんが、農家として生計を立てるためには作物を安定して生産する必要があるため、必要最低限の管理が重要だと思っています。
最後に、エシカル・コンシェルジュ講座の株式会社ボーダレスジャパン ハチドリ電力代表の小野悠希さんのお話もとても良い刺激になりました。私と年齢が1つ違いの小野さんが活躍されている姿を見て、自分の未熟さを感じると同時に「自分もやらなければ!」という気持ちが生まれ、行動するきっかけになりました。
地球環境を良くしたい、改善したいという思いから自然農の世界に踏み出しましたが、最近の勉強で、腸内細菌や微生物の関係から、地球の健康と人の健康は同じ意味と言っても過言ではないことを理解しました。今後私が挑戦していきたいことはまさに「人と地球の健康」です。自然農を軸に衣食住で人と地球に優しい暮らしを自ら実践し伝えていけるような事業展開をしていきたいと考えています。

