張 毓青(チャン ユーチン)さん
Yu-Ching Chang
#29
ファッションが大好きだからこそ、その裏側にある構造的な課題にも真剣に向き合ってきたユーチンさん。オンラインストア「Borderless Creations」を通じて、楽しさと本質が両立するエシカルな選択肢を届けながら、次世代によりいい未来を渡すための挑戦を続けています。
profile プロフィール
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こんな活動をしています
社会起業家/Borderless Creations 共同創業者・CEO 台湾にルーツを持ち、東京で生まれ育つ。銀行、eコマース、海外ファッション企業での経験を通じて、ファッション業界の構造的な社会・環境課題に向き合ってきた。2019年、「スタイルと本質が出会う場所」をつくるため、オンラインストア「Borderless Creations」を設立。スタイルと本質が出会い、「いいことをすること」が「いいビジネス」になる世界を目指している。
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おすすめのエシカル
【ブランド】
Théla(テラ):オンラインストアを立ち上げた時から販売をしているギリシャのアップサイクルブランド。今ではgood on youで”Great”を、日本語版「Shift C」でも高い評価をもらっています。Thélaは、できるだけ廃棄を減らすことを大切にしながら、ヴィーガン素材のバッグやアクセサリーを手がけています。伝統的な手仕事を組み合わせ、リサイクルされたプラスチック廃棄物とオーガニックコットンから生地を作り、すべて手織りで仕上げています。
Guppyfriend Washing Bag:化繊衣類を保護すると同時に、洗濯によって抜け落ちるマイクロファイバーの川や海への流出を削減する洗濯ネット。衣類を入れて洗濯した後、バッグ内に残ったマイクロファイバーを取り除き、適切に処分できます。毎日の洗濯から、海を守る、とても簡単な第一歩です。気軽にできるからこそ長く続けることができます。
知れば知るほどに違和感が生まれたファッション業界の裏側
私は東京生まれ、東京育ちの台湾人です。インターナショナルスクールを卒業後、アメリカの大学へ行き、帰国後、日本の外資金融会社へ就職しましたが、ファッションが大好きだったので、全く畑違いでしたがファッション業界に行きたいと思っていました。
大学の専攻がコンピューターサイエンスだったのでコーディング(プログラミング言語を使ってソースコードを書く作業)でファッション会社のITには行けるだろうけど、リテール(一般小売)がやりたかったので、その後、Amazonジャパンに転職しました。
実店舗はありませんでしたがそこでリテールを習った後、イタリアのフィレンツェにあるファッションの学校で1年ファッション・マーチャンダイジング&マネージメントを学び、インターンでサルヴァトーレ・フェラガモで働いていました。その後、日本に帰国し、ずっと外資系ファッション会社の日本支社で働いていました。
しかし、業界の内側を知るほどに、廃棄の問題、労働環境、環境への影響など、構造的な課題に直面することになりました。例えば廃棄に関しては、服を作る、売れないものはセールする、さらに売れないものはファミリーセール、アウトレットに行く、それでも売れないものは廃棄される。このような流れに違和感が生まれました。
ファッション業界で過ごした年月は、キャリアを築くだけでなく、「このままではいけない」という強い問題意識と、違うやり方でビジネスをしたいという決意を育てました。
その当時、子どもができたこともあり、この子が大きくなる頃には未来はどうなるのだろうと不安になる気持ちもありました。元々、夫とは一緒に起業して何かやりたいと話していたので、そのタイミングが合致して、私たちができるエシカルな活動をやろうと起業しました。
オンラインストア「Borderless Creations」をスタート
その当時はリサーチをしても、エシカルやサステナブルな商品は海外にも多くはありませんでしたし、日本には全くありませんでした。自分たちで商品を作ることも考えましたが、結局エシカルな配慮をしても、水や電気などの資源を使ってしまうことで環境問題や社会問題に加担するのではないかと違和感がありました。
それであれば、既に世界にあるエシカルな商品を輸入して、代替品を紹介した方がいいのではないかという結論に至り、2020年にオンラインストア「Borderless Creations」をスタートしました。
例えば歯ブラシ一つでも、今使っているものを捨てる必要はないけれど、「使い終わったら、よりエシカルでサステナブルなこちらを選んでみない?」というマインドチェンジできたらいいなという思いがありました。
ファッションやライフスタイルには、社会をより良く変える力があると信じています。個人、企業、学校と協働しながら、私たちが「何を選び、どう考え、どう行動するか」を問い直し、日々の選択を通じて本質的な変化を生み出すことに取り組んでいます。
夫も元々ファッション業界で働いていましたし、私自身もオンラインでの販売は既にやっていることだったので、自分たちがすぐにできることだったのも、オンラインストアを始めた理由です。スタイルと本質が出会い、「いいことをすること」が「いいビジネス」になる世界を目指しています。

言葉自体は認知された「エシカル」、その先の理解はまだまだ
2019年から考えると特にコロナ禍の時期にエシカルやサステナブルという言葉自体は認知されたと思いますが、「実際、何なの?」という方が多いのが現状の課題だと思います。
オンラインストアからスタートして、POP UPやマルシェなどでお客さんと会って売るという機会もあります。実際お客さんとお話しすると「私もエシカルやサステナブルやってみたいけど、どこから始めたらいいの?」という人がいて嬉しいです。
Borderless Creationsの商品ラインアップはたくさんあるので、その中のどれか一つでも、ここからスタートしようかなというきっかけになればいいなと思っています。
一方で、「意識高い系ね」と通り過ぎる人や「値段が高い」と感じる人もいます。日本では100均一を含め、低単価の商品などが気軽に買えます。消費者としては、一つの商品を作るのにどれだけのコストと時間がかかっているのか、環境にいいのかどうか、なぜエシカル・サステナブルと言われている物がベターなのか、など分からない方はまだまだ多いと思います。
このようなことからも、言葉は認知されても理解はまだまだ及んでいないと感じました。そういう意味で、もっと人に知ってもらう活動をしなくちゃいけないと思い、学校や企業のコンサルティング活動もしています。

講座受講後、家族でエシカルツアーへ
エシカル・コンシェルジュ講座は、仕事を辞めて起業しようというタイミングで、仕事を通じて知り合った友人に教えてもらい、一緒に受けないかと誘われたのが受講のきっかけでした。
2019年の春の5期で単発受講した講座がとても良かったので、2019年の秋の6期では全部の講座を受講しました。コロナ禍になる前のリアル講座は5期が最後だったので、直接受講生の皆さんと知り合うことができたのはとてもラッキーでした。
他にも同じようなテーマの講座はありますが、エシカル・コンシェルジュ講座ほど包括的にいろいろなジャンルを学べる講座は、なかなかないと思いました。5期で一番印象に残っている講座は、ペオ・エクベリさん(株式会社ワンプラネット・カフェ取締役、サステナビリティプロデューサー)の、【Sustainability in Reality – サステナビリティを形にしよう!~スウェーデンとザンビアでの取り組み~】です。
元々2019年の夏に家族でエシカルツアーを計画していて、スウェーデンはエシカル先進国ということで行く予定だったので、「まさしくこれが見たかった」という内容を教えていただき、とても面白かったです。受講後、実際にスウェーデンへ行ってみて、ペオさんの言っていた通り、コンビニにもフェアトレードマークの商品があったり、バイオマスエネルギーでバスが動いていたり、とてもいいツアーでした。(ツアー〈BC Trip〉の様子)
ツアーから日本に帰ってきて、当時5歳の息子が、日本のコンビニにもフェアトレードの商品あるか店員さんに聞く機会がありました。そもそも店員さんがフェアトレードの意味を知っていたか分かりませんが、当時、そのコンビニにはそのような商品はありませんでした。今もまだまだ少ないですが、以前よりは認証マークがある商品が増えていると感じます。

一人ではない 嬉しくて心強かった
受講後の変化としては、より「一人ではない」と感じられたことです。同じような思いを持つ人がたくさんいると知れただけでも、嬉しくて心強かったです。また、いろいろな人とつながれたこと、関われたこととても良かったです。
一人ひとりが 「私の服は誰が作ったの?#whomademyclothes 」と考えることからファッション産業の透明性を高めていくグローバルキャンペーン「FASHION REVOLUTION」の日本の方たちとは、今もお付き合いをしていて、彼らが本国で毎年出しているレポートの日本語版の翻訳のお手伝いをしています。
服づくりの過程を一緒に楽しむ1年間のプロジェクト「ITONAMI」の一つで、服の原料となる綿を育てる「服のたね」は5年続けています。現在は、私自身の活動の一環として、つなぎ役となってプロジェクトの紹介もしています。
学校や企業に「服のたね」に参加してもらい、実際にコットンを作って、コットンを作るのがどれだけ大変なのかを知ってもらったり、着なくなったデニムを倉敷紡績の反毛技術を用いて、新たなデニム製品として生まれ変わらせるITONAMIのプロジェクト「FUKKOKU(復刻)」に参加してもらったりしています。
LFCコンポストの方ともずっとやり取りをしていて、学校でコンポストを導入できるようにしたり、コンポストの話をしてもらったりしています。講座を受けたことで、思いはあっても一人ではできない人を、できる人たちとつなげたり、一緒にプロジェクトをしたり、いろんなことができるようになりました。


今よりもいい地球にして次世代へ渡したい
息子の通っているインターナショナルスクールでは3年ほど前に「サステナビリティ委員会」がスタートしました。学校全体を横断して小学3年生から高校3年生までの各学年1〜2名と、先生たちが参加しています。私は「サステナビリティコーディネーター」とし、企業と学校の間に立っています。
今年も小学生に向けて、私はサステナファッションの話をして、LFCの方がコンポストの話をしたり、去年は高校生の「サステナブルファッションクラブ」でITONAMIの「FUKKOKU(復刻)」プロジェクトに参加して、学生が、保護者を含め全校生徒にデニムを募って集めたりしました。最近では、学校全体でコンポストをやりたい!と考えている高校生たちとどうしたらできるのか、何が必要なのかなどの話しをしたところです。
その他にも、ミートフリーマンデーのように、木曜日を「Plant-Rich Thursday」と題して、カフェテリアでヴィーガンのものを販売、学園祭やPTAで「シングルユース」は使わないなど、できることをやっています。
この活動を始めた理由の一つは、次世代にもう少しいいバトンを渡したい、今よりもいい地球にして渡したい、そのために少しでも何かできたらいいなと思ったからです。子どもたちにとってはエシカルが当たり前の世界になっているので、そのマインドを持っていれば大人になってもよりいい社会がきっと築けると思っています。
昨年からは、大手総合情報サービス会社からも、社員の方々が社会的貢献に寄与できるお手伝いをしています。このような形で、今後も企業とタッグを組んで、もっと活動を広げていきたいと思っています。

1人の100%より、100人の1%
エシカル界隈だけで話をしているとマジョリティと感じてしまうけれど、POP UPやマルシェなどで一歩外へ出ると、まだまだマイノリティだったと思い知らされます。2020年からオンラインストアをスタートして6年が経ちました。一般にエシカルという言葉は浸透したものの、なかなかそれ以上の知識や必要性が浸透していないと感じます。
事業を持続するには、販売、コンサルなどの活動が必須だからこそ、皆さんのマインドセットをどうやったら変えられるかが課題です。サステナビリティをテーマに活動しているのに、自分自身が持続できなければ意味がないので、そのバランスや両立が本当に難しいと感じています。
自分が生きていけなければ、この活動ができないので、どうやったらエシカル消費を促せるのか、もっと選ぶ人を増やせるのか、どうやったらビジネスとして継続していけるかをいつも考えています。
私たちのオンラインストア「Borderless Creations」の商品はエシカルなことは大前提ですが、そこを謳うというよりも、「素敵だから使いたい」、その後に「結果エシカルだった」という流れがいいと思っています。そうでなければ楽しくないし、エシカルだからといって買っても、使わなかったら本末転倒です。
企業や学校、POP UPやマルシェなどでもお話ししますが、1人が100%やる必要はなくて、100人の人が1%でもやるだけで大きなインパクトがあると思います。そもそも100%はできないですし、やろうとすると疲れちゃいます。今自分がいる環境の中で、楽しく持続可能なことをやっていけたらと思っています。