坂本絢悠さん

Sakamoto Ayu

#30

第30回目は、16期修了生の坂本絢悠さんです。インドネシアとの出会いをきっかけに、観光業がもたらすポジティブとネガティブの両面に気づいた坂本さん。現在は「地球への贈り物」という想いを込めた「Earth Gift」のプロジェクトを通じて、作り手の想いや背景を届けながら、エシカルな選択肢を広げる取り組みを行っています。

坂本絢悠さんさんの写真

profile プロフィール

  • こんな活動をしています

    株式会社JTB 企画開発プロデュースセンター 企画開発課 地域交流グループ Earth Gift推進担当 神奈川県横浜市出身。大学時代にインドネシアへ留学し、観光業が地域にもたらす豊かさと、その裏側にある環境・社会課題の両面に触れたことをきっかけに、エシカルな視点に関心を持つようになる。さらに、パーム油の問題を通じて、自分たちの日常の消費が遠くの森や人々の暮らしとつながっていることに衝撃を受ける。そうした経験を原点に、社内新規事業制度へ応募し、エシカル消費をテーマに「Earth Gift」を立ち上げる。現在は、体験・発信・購買を通じて、地球を豊かにするモノづくりを応援する仕組みづくりを進め、消費を、地球が豊かになるプロセスへの参加へと変えていくことを目指している。

  • おすすめのエシカル

    【お酒】

    原料からのプロセスが見えやすく、その土地ならではの自然や風土を感じられるお酒が好きです。自然のリズムや摂理に沿って造られたお酒には、地域ごとの個性や物語があって、とても惹かれます。寺田本家、ヤマネ酒造、天鷹酒造、晴雲酒造のほか、横濱ワイナリー、武蔵ワイナリー、Yumegaoka Sunday Brewing、Far Yeast Brewing、Fujiyama Hunters Beer、房総ラムなど、好きな作り手は挙げたらきりがありません。

    【お茶・ハーブティー】

    お茶やハーブティーも、日々の暮らしの中で大切にしているものの一つです。忙しいときでも、一杯飲むだけで呼吸が整い、自然や土地の恵みに思いを向けることができます。コトトキ農園や樽脇園、SATOYAMERのお茶、みつばち農場や丹沢Herbsのハーブティーなど、自然の豊かさを感じられるものが好きです。

大好きなインドネシアでの経験を原点に

私は東京外国語大学の国際社会学部のインドネシア語を専攻していました。インドネシアについて学び始めてから、その魅力に惹かれ、各地を旅したり、ジョグジャカルタに1年間留学したりする中で理解を深めていきました。

インドネシアは「多様性の中の統一」を掲げる国で、宗教・民族・言語・文化が島ごとに、さらには同じ島の中でも大きく異なります。特に宗教は地域によって信仰心の強弱があったりして、それまで宗教に触れてこなかったので、新鮮で面白いなと感じました。

料理も例えばスープの名前は同じでも島ごとに特色があって味づけが違ったりします。いろいろな違いはあっても共同体の意識はあって、自然が豊かで貴重なものがたくさん残っている、とても美しい島々だと思います。

インドネシアのある風景

日本ではバリは有名ですが、それ以外の島はあまり知られていない印象があります。バリ以外の観光地や魅力も伝わったらいいなと思い、観光産業から取り組もうと考え、JTBアジアパシフィックという海外のグループに入社しました。

2年間は日本で、3年目からはタイのバンコク支店で働いていました。現在は、再び日本に出向して、入社2年目に新規事業コンテストで提案して採択いただいたプロジェクト「Earth Gift」の取り組みをしています。

コンテストのアイディアを出す際、テーマは「エシカル」一択でした。エシカルに興味を持った当時、選択肢を探すのがとても難しかったので、もっともっと自分が選択しやすいようなサービスがあったらいいなという思いが原点となり「Earth Gift」は生まれました。

衝撃的なポジティブの裏側にあるネガティブなインパクト

エシカル・コンシェルジュ講座を受講した理由は、会社でエシカル協会の法人会員になったことが直接的なきっかけですが、元々講座の存在は知っていて個人でも受けようと思っていたので、良いタイミングでした。エシカル・コンシェルジュ講座は、さまざまな業界の講師の方がお話しされるということや、私の好きなボーダレス・ジャパンの田口一成さんや、経済思想家の斎藤幸平さんも以前講師をされていたことを知り、興味を持っていました。

エシカルを知ったきっかけも、講座で以前講師をされていたEarth Companyの濱川明日香さんのセミナーを受けたことでした。インドネシアが好きで、JTBに入社を決めて、観光業に可能性を感じていた時に、内定後最後の大学のセミナーで、たまたまEarth Companyさんの取組みについて知りました。

内容はバリ島のエシカルホテル「Mana Earthly Paradise」のエコヴィラをオンラインで回るツアーでしたが、このセミナーで観光業が与える負荷が、地元の方の環境や暮らしに悪い影響を与えているということを、初めて数字と共に知ってすごく驚きました。

奴隷労働の可能性があるエビの話も聞いて、日本で消費しているものがグローバル化しているということは、全部がつながっていて、日本にいたとしても消費しているものが、どこかの国の人権侵害や環境破壊につながっているのだと理解しました。

当時は大学も外国語が専門で、留学もしていて、ずっとグローバルな視点でいたはずなのに、全くネガティブなインパクトを考えたことがありませんでした。ポジティブの裏側にあるネガティブな側面に初めて気づかされ、衝撃を受けました。そこから生活がいろいろと変わっていき、エシカルをどんどん勉強していくようになりました。

明確にやるべきことと他者への想像力

講座は全部印象に残っていますが、その中でも特に印象的だった講座が二つあります。一つはClimate Integrate代表理事の平田仁子さんの「これからの気候変動と世界〜私たちが今できること〜」の回です。

日本のエネルギー問題が世界に比べて遅れていることや逆行していること、まだまだ依存度が高い化石燃料や火力発電に対して今優先度を上げて取り組まなくてはいけないことを教えていただきました。そのおかげで頑張らなきゃいけないところや、広めていくために社会的な運動も起こしていかなきゃいけないということが明確に理解できました。

何十年も最先端で本気で取り組みをされてきたからこその平田さんの言葉の説得力は凄かったです。絶望もたくさん感じていらっしゃると思いますが、その中でも希望を滲ませながらお話ししてくださったのがすごく素敵だなと思いました。

今の時代、エシカルは言葉としては広がってきた一方で表面的な取り組みやグリーンウォッシュも増えているので、それに対して憤りはありますが、やっぱり「やった感」で終わってはいけないと平田さんが強く仰っていたのが印象的でした。私自身もまだまだ頑張らなきゃいけないなと思わされました。

もう一つは東京科学大学 リベラルアーツ研究教育院教授の中島岳志さんの「“ 利他 ”から考える、多様な他者とともに生きるためには?」の回です。利他や贈与は関心のある分野でしたが、エシカルという文脈で結びつけたことがなかったので、今回の講座で結びついたのが印象的でした。

「自分がその人であったかもしれない可能性」という言葉はとても考えさせられました。たまたま今の環境や立場に置かれているから今の生活ができていて、恵まれているなと感じる一方で、例えば一般的に犯罪と言われることをしている人の立場に自分がいたら、「そうであったかもしれない」といつも思っています。

それを改めてエシカルみたいな文脈で置き換えると、全然知らない国の人々の消費のせいで自分の暮らしが脅かされていると思うと心が痛いです。このようにポジティブにもネガティブにも、自分と他者はつながっているという他者への想像力を持ち、「利他は利己であり、利己は利他である」、つまり同じ存在だという視点を持てるとみんながエシカルな思考で行動していけるのかなと思いました。考え方としてすごく大切だと思いましたし、とても勉強になりました。

真正面からエシカルに向き合う姿を見て…

どのエシカル・コンシェルジュ講座のお話を聞いても、講師の皆さんが毎回かっこいいなと感じていました。本気で取り組み、実践されている方々の姿勢は本当に尊いものだなと思いましたし、皆さん地に足が付いていて、綺麗事ではないということをすごく感じました。

このように真正面からエシカルに向き合っている方たちがいることがとても希望だと感じましたし、それを単なる他人事として捉えるのではなく、自分自身も実践者でありたいと強く思いました。どの講座にも本当に学びがあり、鼓舞されましたし、もっと頑張らなくちゃいけないなと思いました。

最近モヤモヤするのは、提供側が変わらないとこちらはそれを享受せざるを得ないことです。例えばレストランなどで、海外産の割り箸やプラスチック製のカトラリーなどが出てきたり、ご自由にどうぞと書かれた持ち帰り可能な紙コップやプラの蓋が置いてあったり、バラ売りされていたジャガイモをレジで袋に入れられてしまったり。

良かれと思って行われていることなので難しさも感じますが、自分にできることを実践しようとしても、自然と負荷がかかる社会の仕組みになっていると感じます。もちろん全部を変えることは難しいですし、自分もできていないことが多くて自分にもモヤモヤしますが、一歩いっぽの積み重ねが大事だと思うので、改めて一人ひとりのアクションが大事だと思っています。「消費者の声」などで地道に声を届けるなど、伝えることを頑張りたいです。

Earth Gift 作り手がもっと日の目を浴びる世の中に

今会社で取り組んでいる「Earth Gift」は、作ることで地球を豊かにするモノづくりを応援するプロジェクトです。体験・発信・購買などを通じて、そうしたモノづくりをあらゆる形で応援できる仕組みをつくり、消費することが単なる購入ではなく、地球が豊かになるプロセスに参加することへと変わる世界を目指しています。

いい取り組みをしている多様な作り手の方がもっともっと日の目を浴びる世の中になって欲しいという思いから2025年にサービスをスタートしました。最初はBtoC向けに開始しましたが、現在は法人向けにもサービスを展開しています。

いろいろな取り組みをしている中でも、コアにしている取り組みの一つが「作り手の現場に行き、モノづくりのプロセスに関わってもらう体験」です。ツアー先は作り手さんを探すところから、毎回直接訪問して実際にどういうことができるかお話しして決めています。

ツアーは少人数制で、私自身が毎回同行しているため、伝えられることはとても多いと感じています。直接現場に来ていただいた方に、一つひとつ丁寧にお伝えすることで、その方の選択が少しでも変わるきっかけになればと考えています。今後も、より一層伝えていきたいです。

Earth Giftツアーの様子

文:大信田千尋(一般社団法人エシカル協会)

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