【対談インタビュー vol.1】 宇宙から地球を俯瞰する視点を大切に、世界中から感謝される企業へ株式会社日ノ樹 内田社長 × エシカル協会 末吉代表

株式会社日ノ樹 

【対談インタビュー vol.1】
宇宙から地球を俯瞰する視点を大切に、世界中から感謝される企業へ
株式会社日ノ樹 内田社長 ×エシカル協会 末吉里花

2025年11月、一般社団法人エシカル協会は設立10周年を迎えます。これまでの活動を支えてくださった株式会社日ノ樹内田博之社長(以下、内田社長と称する)とともに、社会課題を解決する事業や活動の在り方、その先に描く未来、そして私たち一人ひとり、あるいは企業が持つべき倫理観――“エシカルなものさし”について語り合いました。

私たちの出会いと大切な原点「樹ガーデン」

末吉:内田社長との出会いは、2023年に「一般社団法人Earth Company」の代表である濱川明日香さんからご紹介いただいたことがきっかけでした。Earth Companyさんは、インドネシアのバリ島を拠点にアジア・太平洋地域で活躍する社会起業家(並外れた変革力を持つチェンジメーカー)を支援する団体で、私たちエシカル協会とも長いご縁があります。

団体の経営について濱川明日香さんに相談していた時期があり、先行きに不安を感じていた私に「今までに出会ったことのない方がいる」とご紹介くださったのが内田社長でした。お会いして、まさにその通りだと感じました。

内田社長私はいつも“宇宙から地球を俯瞰する視点”で物事を考えるようにしているので、そういう点では少し変わっているかもしれません(笑)。

末吉:初めてお会いした際、「日ノ樹さんの経営は、まさにエシカルそのものだ」と感動し、話が止まらず、気づけば3時間ほど語り合っていました。経営だけでなく、内田社長石川会長の中に「エシカルなものさし」があることに“ビビビッ”と稲妻が走り、ぜひ導いていただきたいと感じました。

内田社長“エシカル”という言葉は漠然と理解していたつもりでしたが、末吉さんとお会いして初めて、その意味を正確に認識できました。そしてお話を通して、私たちが行ってきた経営の考え方が、極めてエシカル的なものだったのだと理解できました。今回の対談場所に選んだ鎌倉の「樹(いつき)ガーデン」は、その経営の原点とも言える場所です。

現在、樹ガーデンは庭園を開放して四季折々の変化や富士山の眺望を楽しめるカフェテラスとして運営していますが、もともとは日ノ樹の創業者の別荘でした。ハイキングコースに隣接していたため、滑ってけがをされた方の手当てや救急車の手配、トイレや電話の貸し出しなどを頼まれることが多く、「休憩できる場所があれば」という声からオープンして、すでに40年以上が経ちます。

約2,000坪の敷地の清掃、ガーデニング、環境整備まで、すべて自分たちで行っています。樹木の寿命や害虫、台風の被害もあるため、植林も計画的に行っています。できるだけ人の手を加えず、自然の原風景を残しながら続けてきたことで、樹ガーデンでは四季の移ろいを通して、多くを学ぶことができます。まさに日ノ樹の経営のテーマでもある「自然との共生」を体現する場所であり、今後も守り続けたい大切な経営の原点です。

末吉:実際にここで対談をしていても、自然のすべてに命が宿っていることを感じます。人間が思いやりをもって自然と関わる、そのバランス感覚が本当に素晴らしいです。

樹ガーデンのカフェテラス

今までお世話になった人々への恩返しを

末吉:内田社長はどのような人生を歩まれ、現在の経営哲学に至ったのでしょうか?

内田社長私は熊本県出身で、3歳半のときに実母を亡くし、4歳から養母のもとで育ちました。弟がまだ生後6か月ほどだったため、しばらく養母の実家に預けられました。そこで養母の大学生の弟や高校生の妹たちに、血の繋がりがなくても家族のように優しく接してもらい、人の温かさに触れたことが、私の人生に大きな影響を与えました。

また、幼少期に大火傷を負い入院した経験から、「人の役に立ちたい」と医師を志しましたが、人生は思い通りに進まず、銀行員の道を歩みました。

第一勧業銀行(現・みずほ銀行)で長年勤務後、1999年の3行統合を経て3年ほど勤め、その後、今の「日ノ樹」にお世話になりました。銀行の関係会社には行かなかったのは、転勤のたびに各地の中小企業の皆様にお世話になって、社会人として成長させていただいた恩を返したいという思いがあったからです。

末吉:日ノ樹とはどのように出会われたのでしょうか?

内田社長ある日、銀行の元先輩から、「今自分が働いている会社の日ノ樹の社長に会ってほしい」と連絡を受けたのがきっかけでした。そうして社長に会った1か月後、今度は創業者に会ってもらいたいとの話があり、お会いしましたが、その時に「日ノ樹に来てくれないか」との話がありました。

業種も違うため「私で良いのでしょうか?」と尋ねると、「あなたしかいない」とおっしゃっていただきました。ただ、現役だったため、すぐには辞められず、本店に転勤した後、1年半後に出向が実現しました。普通の銀行員としては、あまりないような人生かもしれません。

末吉: 内田社長がそこまでの決意を持って「日ノ樹」へ行きたいと思ったのは、何か感じるものがあったということですよね?

内田社長最初に「樹ガーデン」を訪れ、155段の階段を登って目の前の自然を見たときに衝撃を受けました。バブル崩壊で多くの企業が資産を手放す中、鎌倉に2,000坪の敷地を所有し、しかも自然の原風景を守っている中小企業があることに驚いたのです。それが入社を決意した最大の決め手でした。

末吉:とても共感します。私も鎌倉出身なのでご縁を感じずにはいられません。

日ノ樹の理念、目指す姿 「Money Follows the Vision」

内田社長日ノ樹は、中長期的な視点で物事を考えることを、大事にしています。短期的視点では本質を見失う恐れがあるからです。「宇宙から地球を俯瞰する視点」を大切にしながら、「世界中から感謝される企業」を目指しています。

そこに流れる思想は「平和」「平等」「多様性」「自然との共生」「他者への思いやり」。これはエシカルという言葉を認識する前から私に根付いていた考え方ですが、末吉さんとお話しすることで、これらは極めてエシカル的な発想だということが理解できました。

また、「Money Follows the Vision」という考え方も大切にしています。これは、「やるべきことをやり、なすべきことをなせば、利益は必ず後からついてくる」という考え方で、それを共有して理解する人の輪が広がることを願っています。

地球から宇宙まで広がる「日ノ樹ファミリー」

末吉:とても大切なことを教えていただきました。その理念やビジョンに基づいてされている事業や支援内容を具体的にお聞かせください。

内田社長私たちは「自らの利益を、価値観を共有している他者のために使うこと」も信念に入れています。私が日ノ樹に入社した当時は、オフィスビルやマンションを30数物件所有していましたが、財務の改善を図りつつ、100年企業になり得るための新たなビジネスモデルを考えました。

その新たなビジネスモデルとは、新しい産業を興すであろう若手のベンチャー企業経営者を物心両面からサポートするということです。不動産という有形資産から、人という無形資産への転換を進め、50以上の企業・団体を継続的に支援してきました。代表的な事例は2013年に「学び・教育」と「宇宙」というテーマが突然ひらめいた「Gakko」と「ispace」との出会いです。

私は、教育は未来への架け橋であり、お金の有無に関わらず平等に受けるべきだと思いました。また、地球温暖化、人口増大の地球において、宇宙開発の高度なテクノロジーは人類の課題解決に不可欠だと考えたのです。

そういう思いの中で、「Gakko」を主催するイェール大学生の古賀健太氏(当時21歳)と、月面探査車を開発する「ispace」 の袴田武史氏(当時33歳)に出会いました。今考えると、とても奇跡的な出会いだったと思います。

いずれも当時はそれぞれ一人でしたが、今やGakkoは世界130か国で1,350人のネットワークに。ispaceは上場企業となり、今や20か国から300人以上のエンジニアスタッフが日本やアメリカ、ルクセンブルク、ドイツを拠点としたヨーロッパで活動しています。

「日ノ樹ファミリー」は、アジア、中東、アフリカ、ヨーロッパ、アメリカ、そして宇宙(月面)までネットワークが広がりました。その中には、困難な状況におかれている人たちの支援や国外退避を支援する団体などがあり、多種多様な方々との幅広い人脈が構築されています。

末吉:大変光栄ながら、我々エシカル協会もその「日ノ樹ファミリー」の仲間の一員として入れていただいているわけですが、「Money Follows the Vision」を実現していくのは相当な覚悟が必要だと思います。困難なこともたくさんあるのではないですか?

内田社長そうですね。今までお話ししてきた支援は全額自己資金で行っているので、継続することはある意味凄く大変です。若手ベンチャー企業は途中で上手くいかなくなることや、ビジネスモデルが合わないこともあるので、大変な面もあります。

また、起業したばかりの段階から支援をするということは、普通の銀行やベンチャーキャピタルが、なかなかできないようなことをやっているので、極めて困難な道をずっと歩んでいると言えます。

しかし、若手起業家と同じ目線に立って最後まで一緒に歩んでいくというのが、我々の考え方です。日ノ樹は創業70年を迎え、現在は有形資産から無形資産への転換期にあります。「人こそ最大の財産」と捉え、100年企業を目指して日々頑張っています。

創業100年に向けて 少しでも世の中が平和で、安心して暮らせる社会に

末吉:内田社長が社長に就任してから20年近く経った今、創業100年に向けてこれから30年、その先に見据えているものはどんなことですか?

内田社長事業を継続するためにはどうしても安定的な収益が必要です。できれば中核不動産を保有し、安定的な収益を確保しながら、引き続きベンチャー企業を支援しつつ、NPO法人などの社会的貢献事業を毎年継続支援していく――それが、次の30年、そして創業100年に向けた私の願いです。「少しでも世の中が平和で、安心して暮らせる社会にするにはどうしたら良いか」を日々真剣に考えています。

末吉:お話を聞いていると尊敬の念しか出てこないのですが、極めて困難な中で続けていきたいと思えるような印象的な事例はありますか?

内田社長今までやってきた全てが印象的です。支援先の企業は全てが唯一無二で、多様性に溢れるメンバーです。そして、お金が中心ではなく「思いやり」がベースにあるメンバーだからこそ我々が存在する意味があると考えています。私たちは当たり前のことをやっているだけなのです。

また、人と人との繋がりがあると多種多様な情報がもたらされ、それぞれの知見が集まると課題解決のスピードも速くなります。これは「Money Follows the Vision」を体現化した結果です。やはり人と人とのご縁を大切にしながら、思いやりの心を持つことが凄く大事だと思います。

今見据える未来 歴史に学び武士道精神を活かす

末吉:内田社長が最近注目していることを教えてください。

内田社長最近は、「歴史に学ぶこと」「温故知新の精神」を重視しています。江戸時代にはすでに循環型社会があり、日本独自のエシカル文化が存在していました。その精神を大事にして現代に活かしていくことが大切だと思います。これはエシカル協会さんとの関係が深まることで良く考えるようになりました。

また、「武士道精神を経営に活かす」ことも意識しています。儒教の「五常」である仁・義・礼・智・信は、まさにエシカルの根幹にある他者への思いやりです。これらも大事にして経営を行いたいと思っています。

もう一つは、「第一次産業」に注目しています。食料自給率が30%台の日本で、できるだけ安心安全で持続可能な食料供給を実現するために、どうしたら良いかを考えるようになりました。

先日、札幌に3週間ほど行って来ましたが、今年は高温で家畜の生育状況が良くないと聞きます。ピーク時に比べて北海道は水産資源も減っているので、タンパク質確保という意味で陸上養殖に移行していくことが大事だと考えています。

そこで、植物性(レモンの皮やオリーブオイル等に漢方薬の原料を混ぜた)飼料の開発や、温泉微生物(20億年近く昔から80度という高温の中で生息)を活用した飼育研究などに取り組む方々を支援していく予定です。

地球温暖化、人口増大により特にアフリカを中心に「食料問題」が紛争や対立、最終的には戦争を惹起することになりかねません。これらの技術を発展途上国にも広め、食料問題の解決と自立支援を目指していけたらと考えています。

末吉:全人類にとって食とエネルギーの持続可能性はとても重要であると思います。日本の食料自給率向上、世界の食料確保のために具体的に動いていく、ということですね。

内田社長そうですね。広大な地域になると人の力では及ばないので、まさに宇宙の出番です。例えばケニアで大規模植林をするチームは、発育状況を人工衛星で監視するなど、衛星を使って今では海上も陸上も管理できるようになっています。このような宇宙的視点が大事なのではないかと考えています。

末吉:まさに、どこかに副作用が出ないかホリスティックに考えていくことや、複眼的な視点を持つことがとてもエシカルだと思います。一つひとつの事業をそういった眼差しでやられていることに非常に驚きました。

行動こそが、新しい視点と出会いを生む原動力 最後の一人になっても続けることが大切

末吉:内田社長は新しいテーマや出会いの発掘はどのようにしていらっしゃいますか?

内田社長常に興味と関心を持って行動していると、世の中の“シグナル”が自然と目に入ります。それらが連鎖的に結びつき、未来のビジョンが見えてくる。行動こそが、新しい視点と出会いを生む原動力です。

末吉:私もどんなに小さな一歩でも「行動」なくして希望は生まれないと思います。最後に、読者へのメッセージをお願いします。

内田社長小さな積み重ねがあってこそ大きなことも成就できると思います。どんなに困難でも諦めず、最後の一人になっても続けることが大切だと思います。困った時は一人で抱え込まず、きっと誰かが見ていてくれると信じることが必要です。困難を乗り越えた先には、必ず明るい未来があります。そうすることで、他者への感謝や思いやりの心が生まれるはずです。

それが“エシカル的”であり、私たちの経営理念そのものです。夢や希望、未来が展望できる思いやりにあふれた世の中にしていくために、一緒に歩んでいきたいと思います。

末吉:とても勇気づけられるお話をありがとうございました。困難な時代に希望を持ち続けることの大切さを改めて感じました。何があっても諦めてこなかった内田社長が目の前にいらっしゃるので大丈夫だという安心感も与えていただきました。

内田社長数多くのベンチャー企業の創業者に同じようなことを言ってきましたが、私も非常に困難な状況に陥ったことがあります。他者に対して言ってきたことが自分に跳ね返ってきたようです。その時に先ほどの自分の言葉に助けられました。

エシカルには、物質的な面と精神的な面があると思うので、両方を大事にして、何のために人間として生まれてきたのか、どう生きれば良いのかを考えることが大切だと思います。人間の祖先、ルーツのアフリカには、宗教、人種、貧富、性差すらなかったのかもしれません。生きとし生けるものを大切にすることがエシカルの倫理観に繋がると思っています。

末吉:私が団体を立ち上げたのもアフリカのキリマンジェロに登頂したことがきっかけでした。今のお話を聞いて、なぜ我々は地球上に生まれてきたのか、どのようにより良く人間として生きていけば良いのかという問いを生き続ける姿勢こそ「エシカル」なのだと思いました。

内田社長は東京の会社のビルの周りも毎朝掃除をなさっていて、足元にあることを地道にやりながら、宇宙的な視点を持ち、その間を行ったり来たりしながら、まさに「エシカル」を体現してらっしゃいますよね。

今日のお話は私たちが多くの人に伝えていかなければならない使命をいただいた気持ちです。私たちも今年で創立10周年なので内田社長や今までご支援くださった方々に恩返しができるように頑張ります。次の10年も今日お話しいただいたことを大切にし、視座を高く持ちながら、常に人や自然に対して感謝の気持ちを忘れずにエシカルの普及啓発をしていきます。

内田社長エシカル協会さんとの接点ができたことで我々も感化された部分がいっぱいあり、ありがたく思っています。過去は変えられませんが未来は変えられます。未来志向の視点を持ち、一緒に明るい未来に変えていきましょう。

末吉:ありがとうございました。

文:大信田千尋(一般社団法人エシカル協会)
2025/11/30

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