なぜエシカル?

こういう時代だからこそ

21世紀に入り、私たち人類を取り巻く環境が著しく変化をしています。地球は無限で
あり、経済も永久的に成長できると信じてきた時代は終わりました。これからの時代
は地球は有限であり、経済成長がすべてではなく、共生、共存、シェア、利他の概念
を持たなければ地球も人類も持続可能ではない、ということが明らかになりました。
この新しいパラダイムを作るひとつの有効な考え方が「エシカル」なのです。

エシカルな考え方が必要とされる背景

「写真提供:特定非営利活動法人ACE」

21世紀に入り、私たち人類を取り巻く環境が著しく変化をしています。
気候変動に伴う温暖化、異常気象の多発、森林資源の枯渇、水資源の不足や食料危機、生物多様性の損失といった問題が起きています。
また、経済を優先してきた社会システムによって、グローバルな格差も広がりました。賃金の安い途上国での労働搾取や児童労働の問題なども深刻です。
20 世紀初めは 15 億人だった人口は、現在約 77 億人まで増加しました。私たち人類は今、「人新世(ひとしんせい)」という時代を生きています。
「人新世」とは、「人類が地球の生態系や気候に大きな影響を及ぼすようになった近年の地質学的な時代」を表しています。
果たして、人類は、地球は持続可能なのか、と誰もが不安を抱く時代なのです。

地球は無限であり、経済も永久的に成⻑できると信じてきた時代は終わりました。
これからは、地球は有限であり、経済成⻑がすべてではなく、共生、共存、シェア、利他の概念を持たなければ持続可能ではない、ということが明らかになりました。
この新しいパラダイムを作るひとつの有効な考え方が「エシカル」なのです。

エシカル消費が必要とされる背景

前述した通り、今世界では深刻な環境破壊や地球の温暖化、賃金の安い途上国での労働搾取や児童労働などの問題が起こっています。
例えば、カカオ豆やコーヒー、パーム油、コットンなどの生産現場は深刻な状況です。
原因の一つは、資本主義社会にみられるグローバル経済の席巻です。
生産コストを大幅に下げて、安い商品を大量に売るビジネスモデルの拡大によって、そのしわ寄せが環境の破壊や途上国での搾取につながっています。
法に触れないからといって、利益のみを追求する企業が環境を破壊し、途上国で労働搾取することは果たして正しいことなのでしょうか。
大量生産されたモノが安価で、いつでも捨てることができるからといって、消費者である私たちは購入しては廃棄するというサイクルを続けてもよいのでしょうか。

「写真提供:特定非営利活動法人ACE」

私たちは毎日必ず洋服を身につけていますが、その主原料の一つであるコットンの例を取り上げてみましょう。
世界では約 1 億世帯がコットン生産に従事していると言われていますが、そのコットン生産量の約 90%が途上国の農村地帯から生まれています。
(Fairtrade Foundation「Fairtrade and Cotton」(March,2015))。インドやウズベキスタンでは深刻な児童労働も珍しくありません。
また、世界中の農耕面積のわずか2.5%足らずのコットン農場で、殺虫剤の16.1%、除草剤の 3.9%が使われています。
しかも途上国のコットン農家たちは農薬を扱うための教育を受けていないため、マスクもせず上半身裸の状態で作業をする農業従事者もいます(PAN: Pesticide ActionNetwork UK (June,2018))。世界保健機関(WHO)によると、2012 年には農薬による健康被害で 1 年間に3万人もが亡くなっているという事実が報告されています。
洋服も含め、日常的に多くのコットン製品を使用している私たち消費者にとって、コットン生産の現実は決して遠い世界の問題ではないということがお分かりいただけるのではないでしょうか。

 
 

消費者とエシカル

消費者がエシカル消費を意識し始めたのは最近ではありません。
エシカルな(倫理的な)消費者を意味する“ethical consumer”という雑誌は、1987 年英国のマンチェスターで発刊されました。
その使命は消費者の行動で国際的な企業にエシカルな経営と製品の生産、提供をさせることでした。
エシカルな企業の製品を消費者が積極的に購入し、同時にエシカルに生産されていない製品を購入しないボイコットという手段も選択されました。
例えば、オゾン層の破壊の原因となるフロン使用製品の不買運動などがそれにあたります。日本では、2010 年頃から「エシカル」という言葉が徐々に使われ始めました。
2010 年9 月に「エシカル」というキーワードでグーグル検索された件数は、4.6 万件。2011 年東日本大震災以降、社会貢献の意識が日本中で強くなり、2015 年 10 月にはその件数は44 万件にまで増え、時代を読み解く消費のキーワードとなる兆しをみせています(株式会社デルフィスの意識調査より)。消費者庁が 2017 年に行った消費者意識調査では、「エシカルな製品を購入したい」と考える消費者が全体の 6 割にものぼり、エシカル製品に対する消費者の関心の高さが浮き彫りになりました。

消費者が積極的にエシカル消費をする社会は、「消費者市⺠社会」と呼ばれ、政府もそうした社会づくりを後押しするために、「消費者教育推進法」を 2012 年に制定しました。また、2015 年 5 月には消費者庁によって「倫理的消費」調査研究会が設置され、広い角度からエシカル消費の拡大による消費者市⺠社会の形成について検討されました。

日本でも、私たちにとって身近な「安全」「取引」「表示」の分野で、企業の非倫理的な行為、例えば、マンション杭打ちデータ偽装、自動車排ガス違法ソフト開発、
期限切れ鶏肉食品の輸入、有機肥料偽装販売などが多発しており、消費者は大きな不信感を抱いています。

一方バングラデシュでは、2014 年 4 月に起きた 8 階建てのラナプラザ縫製工場の崩壊事故で、約 1130 人以上の生産者が亡くなりました。
この工場では、欧米で販売される人気のファストファッションのブランドの洋服が作られていましたが、従業員 3639 人のうち約 8 割は、18 歳から 20 歳の若い女性であり、見習いは時給 12 セントという低賃金で 1 日 13 時から 14 時間も働かされていたと報告されています。不法に立て増された5階から上がミシンなどの振動によって倒壊したこの事故は、欧米のニュースで連日取り上げられ、安価なファッションの裏側を知ることになった多くの消費者が大きなショックを受けました。

こうした事故が明るみになったタイミングと前後して、日本でも若年層のエシカルな企業を支持する率が高くなっています。
2013 年に大学生 300 人を対象に行った調査では、なんと 93%が「フェアトレード実践企業の商品を買ったり、人に薦めるなどしたい」と答えています(NPO 法人フェアトレード・ラベル・ジャパンによる意識調査)。また、2015 年 12 月に一般社団法人全国消費者団体連絡会が日本生活共同組合連合会の組合員を対象に行った意識調査では、エシカル消費の動機として「問題があるとわかっていながら無視したくない」と答えた 20 代が 23%を超え、他の年齢層と比べて最も高いことがわかりました。こうした次世代の意識を考えれば、エシカルはもはや、企業にとって必要不可欠な要素と言っても過言ではありません。

企業とエシカル

消費者がエシカルを意識し始める中で、企業としてエシカルな事業を継続して行うことは今後とても大切なことになります。
欧米では、企業の倫理的な経営や生産を評価する第三者機関が重要な役割を果たしており、日本でもようやく同様の評価団体(エシカル通信簿)が出てきました。

2015 年 9 月には、国連が「SDGs Sustainable Development Goals 持続可能な開発目標」(SDGs)を採択しました。2030 年までに達成すべき 17 の目標を掲げましたが、そのうち 12 番目の目標は「持続可能な生産消費形態を確保する(つくる責任、つかう責任)」です。実はエシカル消費はこの 12 番目の目標の達成に寄与するだけでなく、例えばフェアトレードを推進、実践していくことで、他にもいくつもの目標を同時に網羅することができます。SDGs の中でも、どんな人にとっても一番身近で実践しやすい手段がエシカル消費であると考えています。また、「包摂的かつ持続可能な経済成⻑およびすべての人々の完全かつ生産的な雇用と適切な雇用を促進する」という目標の中では、強制労働や児童就労の禁止と撲滅を保証する、と宣言されています。この歴史的な決意は、すべての国々、すべての利害関係者の協力的パートナーシップのもとに採択されました。日本の企業もこれらの目標を達成することを前提に事業を進めることが求められているのです。

エシカルな企業のメリット

一般社団法人エシカル協会では エシカルな事業を行うメリットを以下のように考えています。

・グローバル社会で求められる SDGs の達成に大きく寄与できる
・消費者がサプライチェーンの透明性を求めるようになり、エシカルな企業を選択する時代に突入する中で、競争優位性が高まる
・10 年後には消費活動の、ひいては社会の中心となる、現在の 10 代、20 代が求めるエシカルな企業としての価値を創出できる。
・そうした世代が求める企業になることで、優秀な人材の雇用確保に繋がる
・エシカルな企業のパイオニアになることが、先行者利益という形で大きな武器や強みになる
・エシカルな事業はもはやマーケティングの手法ではなくなり、多くの消費者にとって「企業の事業目的(ステートメント)」を表すわかりやすい有効な手段である

エシカルな事業を推進することは、ますます意識が高くなる消費者に支持され、次世代の労働力を確保し、社員が誇りを持って働ける企業文化を醸成することに繋がり、ますます厳しくなる市場において持続可能な形で事業を継続していくための必要条件となり、同時に、その大きな戦略の柱になり得るのです。