INTERVIEW

アインズ株式会社

自らを「コミュニケーション プラットフォーム カンパニー」と位置づけ、脱プラ印刷をはじめ、ボタニカルインキ、水なし印刷、抗菌・抗ウイルス印刷の推進、絵本の制作など様々なチャレンジを続けているアインズ株式会社さんをご紹介いたします。

私たちは、カタログやチラシ・パッケージ・出版物・広報誌などの受注に際して「人と環境にやさしい印刷」を提案している印刷会社です。

ご存じでしょうか。世界最古の印刷物(製作年代がわかっているもの限定)は、和紙に「お経」を印刷したものです。印刷は宗教とともに世界に広まったと言われています。大昔は、直接会って話ができない地域の人に教えや思いを伝えるため、印刷が力を発揮しました。
時代が変わり、インターネットやSNSなどの新たな情報伝達手段が台頭するにつれ、印刷業界は「製造業」としてのポジションが色濃くなり、価格競争も激しくなりました。

そこで、私たちは限定的な「製造業としての印刷業」からの飛躍を目指し、2017年のSDGs宣言で自らを「コミュニケーション プラットフォーム カンパニー」と位置づけました。この呼称には、私たちは社会・企業・人のコミュニケーションニーズを期待以上に具現化し、社会課題を解決する会社でありたい、との願いを込めています。

現在は、企業と消費者のエシカルなコミュニケーションを支える技術提供に力を入れています。
近年、海洋プラスチックごみ問題や脱炭素など、世界的なプラスチック削減を背景としたご相談が増えました。例えば「紙の商品に使用されている表面加工のPPを、プラスチックを使わない仕様にできないか」という内容です。
PPとは、印刷物を傷から守るため、紙の表面にプラスチックの薄い膜を貼る表面加工です。商品の輸送時や陳列時、パッケージの印刷に擦れ傷をつけないため、大切な役割を果たします。書籍の場合は、何度も繰り返し読んでもらう耐久性をPPで確保しているため、一概にPPを悪者だと決めつけ、無くす訳にはいきません。

相談を機に、私たちはインキメーカーと協業し、約1年をかけてPP加工に代わる表面加工技術を開発しました。「脱プラ印刷」という、PPと似た性能を持ちながら従来消費していた石油由来のプラスチックを体積比15分の1(当社比)に減らす技術です。脱プラ印刷を通じて、大切な商品に傷をつけずに売り場に届け、生活者に繰り返し使用してもらう。企業の想いを消費者にエコロジカルな方法で届ける――そんなコミュニケーションを実現したいと考えています。
現状の脱プラ印刷には課題が残されています。ひとつは耐水性の低さ。この点は、パートナー企業と改良を続ける必要があります。
もうひとつは、脱プラ印刷の担う表面加工は印刷の一過程にすぎないこと。今後は、用紙やインクの選定から古紙リサイクル・排出といった、印刷物のライフサイクル全体でのエシカルな提案が必要です。私たちは脱プラ印刷と並行し、植物由来成分配合の「ボタニカルインキ」や、有害な揮発性物質を出さない「水なし印刷」、安全な衛生環境づくりに向けた「抗菌・抗ウイルス印刷」の推進にも取り組んでいきます。

BtoC向けに自社製品の開発にも取り組み始めました。そのひとつが、2021年に出版した絵本「Hello Kitty ぼくとわたしのSDGs」です。社内の若手メンバーと子ども環境情報紙「エコチル」の方とで話し合いながら制作し、監修をエシカル協会さまにお願いしました。
本の内容は、ハローキティが解説役となり、SDGsの17個の目標に沿って日本と世界の暮らしを見つめ直すというもの。子どもの心に残る絵本を目指してソーラー印刷という仕掛けを入れており、絵本のページを太陽光に当てることで、無地の部分にソーラーインキで印刷されたカラーイラストが現れます。
今後はこうした体験を、読み聞かせなどのイベントを通じて広めていきます。(2021年12月8日~10日に東京ビッグサイトで開催される「エコプロ2021」にて読み聞かせイベントを実施)

これまでの取り組みを通じて、アインズでは社員のひとりひとりがエシカルな製品やSDGsへの貢献に興味を持ち始めています。社員の家族も含めてSDGsに触れられる環境づくりを目指し、絵本は社員にも一冊ずつ配布しました。
エシカル協会の会員となった今後は、印刷会社としてできる様々な社会課題解決に取り組んでまいります。

会社名:アインズ株式会社
会社HP:https://www.shiga-web.or.jp/eins/