身近な食品や伝統的な食文化という視点も交え、パリのアニマルウェルフェアについて、矢武さんからのレポートをお届けします。
こんにちは、フランス国パリ市在住の矢武陽子です。パリでの日常生活を2年経験して少し慣れてきたこの頃ですが、「エシカル消費」という面ではどうだろう?と、振り返ってみました。
まず目に付くのは、卵です。スーパーにずら~っと並んだ卵パックは、どれを選んでいいか分からないほどの種類があります。理由の1つは、卵の生産方法によって5つのカテゴリーがあるからです。最高は、1羽あたり土地面積基準を確保した放牧かつビオ飼料を用いることなどが決められていて、欧州ビオ・ロゴが掲示されています[1]。当然、ロゴが掲示されていれば値段が高い傾向にあります。例えば、このスーパーでビオ卵を買おうとすると、1玉約0.8€(110円程度)ですが、ロゴ無しを選べば約0.2€(28円程度)です。日本のようにTKG(卵かけご飯)を頻繁に食べるわけでもないし、高ければ黄身が濃厚で特別美味しい、というほどでもありません。かといって、ケージの中で一生を終える鶏のことを思うと、選択肢があるなら他を選ぼうというマインドになりました。許容できる値段と飼育方法を天秤にかけて、正直、1年以上かかってやっと我が家定番の卵パックを選べるようになったところです。
もっと悩ましいのは、フォア・グラfoie grasです。私はフォア・グラは大好きで、フォア・グラをポワレ(炙り)してフルー・ド・セル(花塩)をかけたものに、Madiran(南西仏の地域)の濃厚な赤ワインをあてたら、もうたまりません。しかし、フォア・グラの生産は強制給餌という方法を用いていて、EU内でその方法を禁止していないのはフランスを含む5か国のみです[2]。L214というフランスの動物権利団体がフォア・グラの生産現場の動画を公開していました[3]。賛成・反対の議論をよく聞いて判断したいものの、これを見ると、私は吐き気がしました。実際、フランス国内でもフォア・グラの消費は減少していて、伝統的に根付いている食文化とはいえ、人々が倫理的な食品生産を追求していくならば、次第に薄れていくのが想像されました。
以上、雑感ですが、パリ生活を「エシカル消費」という切り口で振り返ってみました。意識せず行動していた面もあったので、自分で調べたり他人の意見を聞いたりして、自分なりの考えを少しずつ確立していこうと思いました。