シンガポール在住のエシカル・コンシェルジュ・田畑雅子さんからの現地レポートをご紹介いたします。意外な動物が公園でお昼寝していたり、「自然」という視点からシンガポールの新たな一面に出会えます!

皆さん、こんにちは。
今回は私の住んでいるシンガポール共和国の「自然」についてご紹介します。

シンガポール、といえばマリーナベイサンズやビル街など無機質で都会的なイメージをお持ちの方も多いと思います。しかし実は国土の約1/3が緑に覆われた世界の大都市でも有数の”Green City”なのです。

シンガポールは東京都23区よりやや大きい程度の島国ですが、4つの自然保護区に加えて300以上の自然公園があり、それらは気温上昇やCO2排出の抑制など環境面への貢献はもちろんのこと、ストレスの多い現代社会において人々の貴重な憩いの場となっています。加えて街路樹の整備や商業ビル、集合住宅の緑化も進んでおり、市街地でも野生動物を見かけます。鶏の原種といわれるセキショクヤケイが道路沿いで餌をついばんでいたり、絶滅が危惧されているビロードカワウソが公園で昼寝をしていたりする様子にも、何度か遭遇するうちに驚かなくなってしまいました。

一年中高温で四季のない国ですが、7月にはフクロウの子育て、11月には日本などから渡ってきた猛禽類を目にすることで季節の移り変わりを感じることもできます。

このように自然を身近に感じることができるシンガポールですが、残念ながら「手付かずの自然」はほとんど残っていません。
シンガポールは今年で建国56年の比較的歴史の浅い国です。19世紀までは国土のほとんどが熱帯雨林やマングローブ林に覆われ、今では想像もできませんがトラも生息していたそうです。その後の開発により建国時点では既に原生林の90%以上が失われていましたが、リー・クワンユー初代首相が国の事業として積極的に緑化を推進し、植樹活動や公園を整備したことによって現在の緑豊かなシンガポールがあります。多くの野生動物も一度は姿を消したものが環境や水質の改善、また熱心な自然保護活動によりそのうちの何種類かは再び見ることができるようになりました。現在私たちが享受しているのは人間が一度壊したものが計画的に再生され、管理されている自然なのです。

一方で、国土の狭いシンガポールでは野生動物と人間の距離、開発か自然保護どちらを優先するかといった話題はよくニュースにもなっていて、自然と共生することの難しさを実感する日々でもありますが、植樹活動やゴミ拾いなど、個人としてできることから参加して貴重な都会のエコシステムを守っていきたいと思います。