今月は、フランスの台所とも言える、食材豊かなブルターニュ地方。

そこで取り組まれている様々な食育について、ロジェ潤子さんのレポートをお届けいたします。

皆さん、こんにちは。

現在フランス北西部、ブルターニュ地方の主要都市レンヌ近郊に在住しています。

この地方では、古くから農業、漁業、畜産業が盛んでフランスの台所といってもよいくらい、食材の豊富な地方です。

このブルターニュにおいて、現在BIO(=オーガニック)やローカルな消費に関連する子供たちへの食育について取り組まれていることをいくつかご紹介したいと思います。

まず、公立小学校の給食では、ここ10年ほどの間で給食の食材をBIOやローカルの生産者から直接購入する取り組みが徐々に始まりました。BIOの生産者は、大手の販売先を確保することが難しく、それぞれがマルシェや自分の敷地での直売に頼っていることが多く、給食のように安定的に購入してもらえるシステムは非常にありがたいという声を聞きます。

また、小学校低学年では、BIOマークについての授業が導入され、家庭にある食品パッケージなどを持ってきてBIOの背景を学ぶといった取り組みもされています。

子供たちが体験できることのひとつとして、野菜の摘み取り体験もBIO生産者が取り組みを始めています。摘み取り体験は、BIOの店舗で購入するよりも安く購入することができ、2本足のニンジンなどを子供たちが知ることができる機会となっています。子供用の農業用一輪車やスコップなども完備されていることから、週末のアクティビティとして人気があります。

BIO野菜の摘み取り体験 (写真提供:Les jardins du châtaignier)

そして、元々このブルターニュではニワトリを庭で飼い、採卵をする家庭が珍しくなかったのですが、コロナ禍での在宅勤務によりさらに需要が増え、ニワトリを飼い始めたという家庭を多く聞きます。我が家にも二羽のニワトリがいますが、日中は庭で放し飼いにしお昼寝をしているニワトリの姿を見ると癒されますし、子供が自ら卵を採りに行く良い経験になっています。

直に生産者の方と触れ合える場としては、マルシェがありますが、従来のように市町村が管理運営をするマルシェではなく、生産者発信型のマルシェという形態が増えてきています。例えば、元々知り合い同士の農家、畜産家、乳製品生産者(牛乳、ヨーグルトやアイスクリームなど)、パン屋さんなどが一緒になって、大きな敷地を持つ農家さんで開催するマルシェや、インターネットで事前に商品を選びクレジット決済をした上で、週に一度すべての生産者が注文された商品を持って主催者の農家に集まり、そこで注文者ごとに箱に入れて用意しておいてくれるといったシステムもあります。このように事前注文して受け取るだけのシステムは“ドライブ”と呼ばれており、忙しい世帯でも新鮮で美味しい食材をスムーズに購入することができるので徐々に人気が出てきています。

生産者発信型マルシェ (写真提供:Ose Alentours)

こういったBIOやローカルに対する取り組みがおよそ20年ほど前から始まり、その教育を受けて育ってきた子供たちが現在社会で活躍をしています。

その一例として、弊社でチョコレートの輸入をさせていただいているMOF(フランス国家最優秀職人)のショコラティエ、イヴァン・シュヴァリエ氏は、2021年に30歳で自身のお店を構えましたが、包装に使う紙はすべてFSC認証で、チョコレートと一緒に使用する素材もBIOや地元産の素材を極力使っています。また、カカオの本来捨ててしまう部分も再利用しチョコレートに使うなど、ゴミをなるべく出さない取り組みをしています。また、チョコレートづくりの際は、油脂がエプロンにたくさん付いてしまうため、毎日プラスチック製の使い捨てエプロンを使用するのが業界の常ですが、洗って使用できるシリコン製のエプロンを使用するなど、新しい取り組みを自然に行っているのが印象的です。

やはり、大人も子供も“知る”ということが重要なのではないかと感じています。

ロジェ潤子さん

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ロジェ潤子さんが代表を務める株式会社カルネ・グルモン

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