「コスメの地産地消」から、本来の心豊かな生活をもう一度考えてみませんか?エルサレム在住の松井葉月さんの記事をご紹介いたします。
イスラエル・パレスチナ 自然派コスメの地産地消のススメ
イスラエルのkfar Haim村の地産製品の販売所。
日々癒してくれた地産の自然派コスメ
イスラエル・パレスチナに5年ほど住んでいます。紛争問題に日常的に触れるこの地で、私を癒し続けてくれたのはこの地の自然派コスメでした。この地は国産の自然派コスメやオーガニックコスメが豊富で、手頃な価格で手に入ります。街中にあるオーガニック食品店や専門店で購入することが可能で、この5年でどれだけ試してきたか数えきれないほどです。その中で心から良いと思ったブランドは本拠地や工場に行き、創業者にインタビューをしてきました。その内の何件かはWebマガジンのISURAERU(https://israeru.jp/author/hatsuki_matsui/)やExpat by COURRiER japon(https://courrier.jp/expat/area/israel/jerusalem/61/18686/)で記事にしているので是非読んでください。この記事のように実際に作り手に出会えて、ブランドと消費者の距離が近いこともこの地の自然派コスメの魅力です。多くのブランドが良質な成分にも関わらず、過度な高級品ではなく、必要な人や使いたい人に届けたいという生産者の思いが詰まっています。
ガザ地区のすぐ近くにあるNetivot村を本拠地とする自然派コスメブランドArugot。
自然派コスメの魅力
まず、そもそもの自然派コスメやオーガニックコスメの魅力をお伝えしたいです。自然派コスメやオーガニックコスメの大きな魅力は、まさに「エシカル」で持続可能性を意識していることです。そして成分がわかりやすく安心感があり、さらに植物の精油だけを使用しているためアロマテラピーの効果もあります。外見が綺麗になりたいのはもちろんですが、使うことで自然への愛情と尊敬の気持ちに満たされ、心からリラックスできます。外見を整えること以上に、心が満たされ温かい気持ちになるメリットは自然派コスメならでは。何かとストレスの多いこの地で、ここまで心身ともに健康でいられたのは家族の温かさはもちろんのこと、毎日コスメが癒してくれたからと言っても過言ではありません。
イスラエル北部で採れたカレンデュラ。この地で取れるオリーブオイルと調合して保湿バームを作るブランドも多い。
イスラエルの自然派コスメ事情
イスラエルには数えきれないほどの自然派コスメブランドがあります。その背景には数ある小さな村で、作物を育てながら個人的に自然派コスメを作っている人が多いからです。多くのブランドが大量生産しておらず、地元の自然派食品店に陳列し、時々オンラインで国内だけに小規模販売しています。いわば「コスメの地産地消」です。上記の記事でも紹介している比較的規模の大きいブランドも、元々は家族や村の人たちのために作っていました。イスラエルは1人の女性が平均3人の子供を産むほど子供が多いため、万一赤ちゃんの口に入っても大丈夫なようにオーガニックコスメを選ぶ人も多く需要があります。一方で、ブランドの製品を国外に輸出するような大量生産を望むか尋ねると、ほとんどの経営者はNo! と答えます。クオリティを下げないために自分の管理が及ぶ範囲で販売したいそうです。
kfar Haim村でモリンガ農園を営むMoringa Israelが作る100%モリンガ種子油。村周辺の小さなオーガニックショップで購入したが他の地域ではあまり見かけない。
イスラエルのアーモンド畑。イスラエル産のアーモンド種子オイルを使用した製品も魅力的。
パレスチナの自然派コスメ事情
パレスチナはイスラエルの占領下にある地も多く、全体的に豊かではありません。しかしながらこの地ではオリーブオイルと苛性ソーダの元になる石灰が取れるため、古来よりソープの製造が盛んです。特にパレスチナのナブルスという地域は有名で、中世にはナブルス産のソープがヨーロッパにて人気沸騰したそうです。伝統的なナブルスソープはとろりとした滑りのある独特のテクスチャーです。現代になってからは伝統的な滑りのあるテクスチャーを好む人もいれば、滑りの少ない洗浄力の強いソープを求める人もいます。伝統を守る一方でハーブを入れたり洗浄力を高めたりナブルスソープは今も進化しています。ナブルスソープと一口に言ってもいろんなブランドがあります。多くが大量生産しておらず、ここでしか手に入りません。どのブランドも良質な有機オリーブオイルのみを使用したり成分を厳選して作っていますが、大体が一つ5NIS(約350円)〜と、非常に手軽な価格で手に入ります。
伝統的なナブルスソープ。とろりとした独特のテクスチャーが人気。
オリーブの彫刻が美しいArabiscナブルスソープ。このブランドもナブルス以外ではあまり見かけない。
農家においても1番美味しい作物は自分達で食べると言われますが、この地の自然派コスメにおいても良いものは海外に出さず、自分達で作り自分達で手頃な値段で提供する「地産地消」が基本となっています。自然派コスメやオーガニックコスメは自然由来ゆえに品質管理が難しいため、大規模に輸送するよりも地産地消が合っているのかもしれません。そうすれば輸送コストや過剰なパッケージングで値段が釣り上ることもありません。自然派コスメやオーガニックコスメは、エシカルで、元々簡素なものです。だから日本のように使いたいけど手が届かない高級品になってしまうのは違和感があります。この地では、望む人々の手に手頃な値段で届き、人々を癒し生活に寄り添うという、オーガニックコスメの本質的な役割がなされていると感じます。皆さんも上質な自然派コスメを探しに、いつかこの地を訪ねてみてくださいね。
【プロフィール】
松井葉月 / Matsui Hatsuki
早稲田大学を卒業後、米系オーガニックコスメブランドにてマーケティング/PR部署で勤務。2017年より家族の都合でエルサレムに移住。現地で出産し、現在はライターをしながらハーバード大学のプログラミングコースを履修中で2022年6月に修了予定。
Works:Expat by COURRiER Japon(講談社)、BRUTUS(マガジンハウス)、Casa BRUTUS BANKSYとは誰か?(マガジンハウス)、未来コトハジメ(日経BP×Panasonic)、Webマガジン ISURAERU コスメ連載 (Sivans) 、元タカラジェンヌ まほろば遊ラジオ エッセイ連載(夢のたね放送局)etc.
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