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【エシカル・コンシェルジュ名鑑】
#13 Planetary health “地球と人のウェルビーイングを目指す”
ピラティストレーナーの\ 江間麻美さん /

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「エシカル・コンシェルジュ名鑑」では、日本全国・世界各国にいるエシカル・コンシェルジュを紹介します。講座を受講したきっかけや、職種、興味のある分野は人によって様々です。どんな仲間がいるのか、どんな活動をしているのかぜひ参考にしてください。

第13回目は、10期修了生の江間麻美さんです。ヘルスケアから環境問題へ繋がり、上勝町へ移住してゼロ・ウェイストアカデミーの理事として活動をしていた江間さん。ある映画を観て、いてもたってもいられなくなったという、その行動力の源についてお話をお伺いしました。

::Profile ::

江間麻美
ピラティストレーナー/管理栄養士
約10年間、ヘルスケアの仕事に携わる中で『環境問題』が『人の健康』に影響を与えていることに関心を持つようになる。2022年、ごみゼロの町として有名な徳島県上勝町へ移住、ゼロ・ウェイストアカデミーの理事として活動。現在は小豆島に拠点を移し、自然豊かな暮らしを楽しみながら、美と健康にアプローチしたピラティスのパーソナルセッションを行っている。
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【お店】
Cafe polestar:「五感で上勝を感じられる場所」をコンセプトにしたカフェ。地元の新鮮な食材にこだわったランチ、スイーツやコーヒーなど山の景色を眺めながらゆったり過ごせるお気に入りの場所。生ごみの堆肥化や調味料の量り売りなどゼロ・ウェイストの取り組みもしています。

タネむすび堂:穀物菜食ごはんとおやつと量り売りのお店。レトロな雰囲気の店内で、自然栽培の野菜や小豆島の旬な素材を活かしたオーナーさんの手料理が楽しめます。グルテンフリーマフィンやロースイーツなど身体にも地球にもやさしいおやつが魅力的です。

左:Cafe polestarの店内の様子
右:タネむすび堂のランチ

ヘルスケアに携わる中で見えてきた環境問題との繋がり

私は管理栄養士専攻の大学を卒業後、病院のご飯の献立を考えたり作ったりする医療系の仕事に就きました。ハードワークにより自身の体調を壊したことがきっかけでやむを得ず退職。もともとスポーツをやっていて体育系ということもあり、人の健康を食と運動という二つの観点からサポートできるようになりたいと思い、パーソナルトレーナーに転職し、ボディメイクの指導をしていました。

その後、地元の名古屋でRINDOUを起業して、フリーランスでパーソナルピラティスを中心に、体調不良で悩みのある方に栄養指導をしてきました。そこで状態が改善されない方にはオーソモレキュラー栄養療法という医学を用いて、提携クリニックで血液検査や尿検査を受けていただき、その結果を共有しながら指導することもしていました。

その検査は物凄く精密で、細胞レベルで検査するため、細胞の中の栄養状態(例えばビタミン、ミネラルが代謝されているかなど)が細かく分かります。その中で、プラスチックに吸着している有害物質も尿検査で数値として測ることができます。

その数値が高い場合、食事内容をヒアリングしていくと、コンビニの弁当を電子レンジで温めて食べたり、冬場に温かいペットボトルの飲みものを飲んだりなどを頻繁にしている方が多く見られました。プラスチックは高温になるとマイクロプラスチックが溶け出すと言われているので、体内にプラスチックを取り込んでいる可能性が高いことが分かります。

このように10年くらいヘルスケアに携わっている中で、色々なお客さまの体調不良を見ていると、環境ホルモンや重金属など、環境問題が原因で体調を崩している人が年々増えていると感じるようになりました。

衝撃を受けた上勝町の45分別のごみステーション


そこから、これは何か大変なことが起きているかもしれないと、環境問題に興味を持つようになり、映画『ゼロ・ウェイストPLUS〜持続可能な暮らし〜』を見たことで、全てが繋がりました。

ごみの問題をはじめ、世界の状況が大変なことになっていると知り、いてもたってもいられなくなり、映画を見た翌月に、映画の中で紹介されていた日本で初めてゼロ・ウェイストを宣言した徳島県の上勝町の取り組みを見に行きました。

初めて上勝町ゼロ・ウェイストセンターの45分別のごみステーションを見た時は、日本にこんな場所があったのかと衝撃でした。1回行っただけでは見切れない部分もあり、まだまだ知りたいことに溢れていたので、私もこのような活動に何かしら関わりたい、こういう暮らしを体験してみたいと思い、その後1年くらいの間、定期的に地元の愛知から上勝町に通っていました。

映画を見たり、上勝町に行ったりすることで、ずっと人の健康を守る仕事をしてきましたが、その前にそもそもの土台である地球の健康(環境)を守らなくてはいけない、視野をもっと広げたいという気持ちになりました。

45分別のごみステーションの一部

エシカル・コンシェルジュ講座を受講してみて


ゼロ・ウェイストや上勝町を知ってから、色々な情報が入ってくるようになりました。末吉里花さんの著書『エシカル革命』に出会ったのもこの頃です。本を読んだことで、エシカル・コンシェルジュ講座を知りました。ヘルスケアの分野から関心を持ったので、世界や社会の様々な問題についてはまだまだ知らないことも多く、色々な分野のことが学びたいと思って受講しました。

一番印象に残っている回は、認定NPO法人アニマルライツセンター代表理事の岡田千尋さんの「地球を分け合う動物たちに配慮する2つの方法」です。動物福祉について何となくしか知らなかったので、映像と共に色々な問題があることを知り衝撃を受けました。

受講してから自分自身の食事は半分くらいをプラントベースに変えましたが、それまで栄養士として三大栄養の一つであるタンパク質の肉や魚をしっかり取りましょうという指導をしてきたので、問題を色々知っていくと、今までと同じ指導では矛盾が生じてしまい複雑な気持ちになりました。

私の仕事はお客様の栄養状態を整えることが第一優先なので、あまり踏み込んだ話はできませんが、受講後は少しこれらの問題に触れることもしています。色んな問題はどこかで繋がっていて、一つを解決しても、また何か次の問題があったりするので、広く知識を持っておくことが大事だなと、講座全体を通して凄く感じました。

ゼロ・ウェイストアカデミーの理事として上勝町で活動


上勝町は人口が約1,250人(2024年7月現在)の小さな町なので、皆さんとても歓迎ムードで、通う度に知り合いが増えていきました。その中でゼロ・ウェイストの活動がしたいと色々な人に言っていたら、ゼロ・ウェイストアカデミーの理事のオファーをいただき、地域おこし協力隊として、上勝町に移住することになりました。

移住後は、ゼロ・ウェイストアカデミーに所属し、理事として依頼があったところに講演会へ行ったり、ピラティスを絡めてリトリートやごみステーションを案内するツアーを開催したりして、1年半くらいゼロ・ウェイストを広める活動をしていました。

講演会の様子

リトリートの様子


上勝町は、そもそも移住者が来ないと高齢化で町が存続できないというシビアな問題があるので、移住者と地元の方の間に線引きがなく交流が密でした。地元の方も若い移住者の活動を嬉しく思ってくれているようでした。

ただ、高齢者にとってはごみの45分別は多すぎて大変という声も多く、今は43分別に減っています。いくら環境に良くても住んでいる方たちが豊かでないと意味がないので、今後は住民の負担をできるだけ減らしていけるように町としても力を入れていく方針のようです。

上勝町で活動する中で学ばせてもらったことは沢山ありますが、その中でも特に凄いなと思ったことが、圧倒されるほどデザイン性の高い建物や、廃棄物からできたとは思えないおしゃれなインテリアなど、ゼロ・ウェイストの魅せ方や表現がとにかくカッコ良いところです。上勝に来る多くの皆さんもやはりこの部分が特に印象に残るようです。

環境問題の伝え方は色々な方法があると思いますが、単純にごみ問題が大変ということでは人々の関心を高めることはできません。おしゃれに見せることでメディアに取り上げられたり、みんなが好きなファッションやビールなど、カジュアルに誰でも気軽に取り組めるところから巻き込んでいったりしているのを見て、発信の仕方はとても大事だなと学びが大きかったです。

自身で発信する際にも、できるだけPOPに、暮らしの中で楽しみながら取り入れていることを伝えるようにしています。

左:上勝町ゼロ・ウェイストセンター内に位置するゼロ・ウェイストアクションをコンセプトとした宿泊施設「HOTEL WHY」のフロントの内観
右:「HOTEL WHY」の外観

ごみステーションに併設するリユースの拠点「くるくるショップ」


また、上勝町で暮らしてみてゼロ・ウェイストを日常に、いかに無理なく楽しんで取り入れられるかが大切だと感じました。例えばキッチンではプラスチックフリーの繰り返し使える「みつろうラップ」や紙ごみを出さないセラミック製の「コーヒーフィルター」などを使っていますが、どれも暮らしが快適になるものや、デザインが可愛くて気分が上がるものです。

自分にも地球にもGoodな選択をしていくなど、小さなことからでも意識してできるアクションはたくさんあると思います。それを積み重ねることで、さらに視野が広がっていくのではないでしょうか。

上勝町から小豆島へ ゼロ・ウェイストの輪を広げていきたい


私が上勝町に移住して間もなく、町ではなく自然の中でのんびり暮らしたいという理由から、両親が小豆島へ移住しました。実は、私自身も元々は小豆島への移住も考えていました。地元から上勝町に通いながら移住を考えていた頃、上勝町は仕事も住む家もとても限られていて中々見つからなかったからです。

運良く、仕事と住む家が見つかったので、上勝町に移住しましたが、一ヶ月に1回は両親に会いに上勝町から小豆島に行っていました。その中で、小豆島には多種多様なお店をやっている人がいることに刺激を受け、もっと色んな人と関わりながら暮らしたいという思いが強くなり、小豆島へ拠点を移すことにしました。

現在は小豆島でパーソナルピラティスを主軸に活動しています。これまで小豆島でピラティスを他にやっている人がいなかったので、想像以上に反響があり、体験は1ヶ月待ちというありがたい状況ですが、今後は自分のライフワークの一つとしてゼロ・ウェイストの活動にも取り組んでいきたいと思っています。

上勝町にはゼロ・ウェイストに本気で取り組んでいる仲間たちがいたからこそチャレンジできたことが多く、とても有難い環境でした。私自身もまたこの新たな土地で、同じような想いを持った方々と繋がりながら、ヘルスケアだけでなくPlanetary health“地球の健康”にも貢献できるように活動していきたいです。

小豆島は離島なのでごみの処理が難しく、ごみ問題は課題だらけです。分別はとてもざっくりしていて、埋め立てをする割合が大きく、持続可能ではないと感じます。とは言え、上勝町のようなごみステーションは、行政がやっていたからあそこまでできていると思うので、自治体でやるのはなかなか難しいと思います。

そこで、生ごみ処理器のキエーロを普及させて、島民の方々が個人レベルでできるごみを減らす取り組みを広めていけたらと考えています。小豆島は素麺が有名で、定期的に素麺箱の廃棄が出ます。先日、その素麺箱でキエーロの試作をしてInstagramに投稿したら、とても反響がありました。

そもそもキエーロを知らない人も多かったですが、キエーロが欲しいという方も多かったので、まずは素麺箱で小豆島のオリジナルキエーロを作るワークショップができたら良いなと思っています。

素麺箱で作ったオリジナルキエーロ

文:大信田千尋(一般社団法人 エシカル協会)
2024/9/30

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