INTERVIEW

株式会社クラハシ

時代とともに変わりゆく海の資源と水産業。その中で、常に新しい試みに挑んでいる株式会社クラハシさんをご紹介いたします。

>株式会社クラハシについて

㈱クラハシは、1896(明治29)年に水産物の荷受け(大卸)として福山地方卸売市場内に創業以来、127年の歴史を刻んでおります。

(写真:株式会社クラハシという屋号になった昭和21年頃の市場)

地域のお台所的な市場機能を重視しつつ、世の中は「簡便さ」と「お客様ファースト」の時代へと大きく変容して行きました。それに対応するべく、弊社は徐々に「魚をただ卸すだけ」の市場機能から、「生産者支援」や「提案型営業」を駆使した商社的機能へとシフトし、仕入力のみならず、スーパーマーケット等の業態別ニーズに応じた「加工」を施して販売する「アソート力」を強化した、新しい時代の市場機能として、イノベーションを図って参りました。

サスティナビリティが重視される時代となり、弊社ではコロナ禍以前より機能強化の観点も含めて、産学連携での「近海魚の陸上養殖事業」と「乱獲抑制に繋がる備蓄事業」を立ち上げ、若手社員を中心に、持続可能な水産業を目指しております。また、魚の付加価値を少しでも高める為の販売方法として、市場独自の受注プラットフォーム(EC)も知財化を含めて推進しており、少しでも多くの方々に「魚流通」におけるフェアトレードに関心を持って頂き、「生産者所得」を回復させる取り組みを推進したいと願っております。

>取り組み事項のご紹介

弊社では、SDGs 12番「つくる責任、つかう責任」と14番「海の資源を守る」に着目し、「社会課題解決事業」として主として2つの事業を推進しています。

(写真:沖縄県伊平屋島)

1.瀬戸内海シロギスを環境に優しい陸上養殖で量産化

弊社は6年前、沖縄県最北端にある美しい離島、伊平屋島の伊平屋村漁協と共同出資で6次産業を軸としたMarine Link株式会社を設立し、美しい自然環境を守り、天然に程近い環境で育つ養殖もずく(養殖エコラベルAEL取得)等を取り扱っております。漁協では、当初ヒラメの養殖場として建設された沖縄県内最大級(50t水槽24基閉鎖循環式)の陸上養殖施設を保有されており、この施設を有効活用して、瀬戸内海のシロギスを平均温度が高く、冬場でも17℃以下にならない為、成長速度の高い沖縄で養殖する事業に着手しています。

写真:左 沖縄種苗センターで元気に働く社員) 右 シロギス飼育水槽 下 50t水槽での養殖)

=福山大学と受託研究契約=

福山大学海洋生命学科の有瀧教授は、瀬戸内海産シロギスの効率養殖に関する研究の権威で、自然界では20㎝以上のテッポウギスに成長するのに3,4年を要する所、1年程で出荷サイズ以上に成長を促す養殖技術を開発されています。弊社は、この技術をベースにキス養殖の商流化を目的として、4年に亘り福山大学、広島県海洋技術センターと受託研究を通じて研究を続け、令和4年4月には、伊平屋島にある養殖施設の隣に沖縄種苗研究センターを設立、本格的に量産化をスタートしました。本格出荷は、来年秋の予定です。

=養殖も生物多様性を意識して=

2030年には、食用魚の7割が養殖魚になると言われています。国内漁獲量はここ数十年で3分の1まで減少、シロギスについて20年間で1/10程度まで激減しており、特に「テッポウギス」と呼ばれる20㎝以上のシロギスは、高級魚として高値で取引される様になりました。エシカル講座で、今まさに陸上生物の95%以上が「家畜と人間」が占めているとありましたが、生物多様性に向き合うならば、養殖飽和魚種(サーモン、マグロ、鯛等)を敢えて避け、前例のない魚種を、環境を配慮した閉鎖循環式陸上養殖で完全養殖し、あくまでも天然魚の漁期以外に出荷するといった、不足分を補う「調整魚」という新しい発想での養殖を目指しております。

2.乱獲抑制となる近海魚備蓄、加工、配送事業

=時化の多い瀬戸内海、安定供給と生産者の安定所得が重要=

瀬戸内海では、その波長の短さ故に1メートル程度の波でも転覆の危険性がある事から、月の1/3は時化で出漁出来ません。その為、漁の際は一斉漁獲と成り、魚価が安定しない上に、乱獲を助長するとも言われています。

=乱獲抑制と、魚の付加価値向上が鍵=

三原市糸崎にある子会社マリンネクスト株式会社や福山にあるクラハシ種苗研究センターでは、広島県特許である低塩分海水(右図)を導入し、漁獲された魚の備蓄と、サイズの小さな魚を一定サイズまで畜養して出荷する事業を進めております。


豊漁の折に魚を在庫として低塩分海水で飼育する事で、魚が負担少なく健康に備蓄しながら不漁期にも安定価格で出荷出来る為、乱獲抑制に繋がると考えております。
また、最高鮮度のまま活魚として効率的に配送する仕組みの追求や、サイズの小さい魚を出来るだけ畜養で大きくし、市場で丁寧に出荷する事で魚の付加価値向上に繋げ、生産者所得を少しでも高める事で、アンフェアトレードと言われる水産流通の改革の一助となればとの思いもあります。

(写真:左 魚の鮮度を重視した加工 右 備蓄と畜養一部風景)

3.クラハシのポリシー

今はVUCA時代です。変容を受け止めつつ、次の時代に地球環境があるサスティナブルな経営とは何かを考えながら、「SDGsウォッシュ」ではない真の持続可能な事業運営を目指し、自社が保有する「知財」の活用も含め、これからも着実に一歩ずつ前進して参ります。

会社名:株式会社クラハシ
会社HP:https://www.kurahashi.co.jp/

【クラハシチャンネル】
https://www.youtube.com/c/KurahashiCoJp/featured
【クラハシInstagram】
https://www.instagram.com/kurahashifish/?hl=ja

公式通販:【贅沢至高】時には贅沢な気分でお魚を。https://zeitaku-shiko.com/
EC:【SETnagiオーダーブック】外食店舗様に市場がコンシェルジュ:https://setonagi-orderbook.com/

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