INTERVIEW

株式会社山櫻

約30年前に業界で初めて「再生紙名刺」を発売し、さまざまなチャレンジと変容を続けている株式会社 山櫻さんをご紹介いたします。

株式会社山櫻は、1931年に創業した名刺や封筒、カードなどの紙製品メーカーです。1991年に業界で初めての「再生紙名刺」を発売したことから、私たちの「エコ」な取り組みがスタートしました。

紙製品の生産をするうえで、私たちは毎日森林資源を消費し、少なからず環境に負荷をかけています。そのような課題を持つ中で、これからは持続可能な仕組みのもとでものづくりをしていかなければならないと感じていました。そこで、国内の森林を健全に保つための「間伐」を活用して生産する「間伐材製品」や、森林の管理によって、そこで働く人々や地域社会、環境にしっかりと配慮されていることを第三者によって認証されている「森林認証製品」などの取り扱いをはじめました。このあたりから、環境だけでなく「人」や「社会」のことも考えたものづくりを意識するようになりました。

そんな折、2012年にOne Planet Paper(R)通称バナナペーパーと出会いました。捨てられていたオーガニックバナナの茎を原料として有効活用し、さらには現地の方々の雇用も生むフェアトレードペーパー…。この紙のストーリーや「1枚の紙が世界を変える」可能性に私たちは大きな衝撃を受けました。バナナペーパーをもっとたくさんの人に知ってほしい、ぜひ一緒にやらせてくださいと、事業をスタートしました。これが、「エシカル」について明確に意識し、本気で自分たちの事業活動を通じて環境・社会課題の解決を目指したいと思う、決定的な出来事となりました。

その後、エシカル製品のラインナップをさらに充実させ、エシカル専門のセカンドブランドを立ち上げるなど、活動が活発化します。すると、社員のマインドにも変化が起こりました。マイボトルやマイバックの持参が増え、「自分の子どもや孫にきれいな地球を手渡したい」と思いを新たにする社員もいました。有志によるエシカルについて考える朝活が開催され、それぞれが実施しているエシカルな取り組みについて毎回配信者の変わる「SDGsリレーメール」を定期配信する試みも続けられています。

お客様のエシカル製品への反応も徐々に変化が表れ始めました。約30年前、再生紙名刺を紹介した時は「大事な名刺に再生紙を使うとは何事だ」と怒られたそうです。その後は、理解ある企業を中心に森林認証製品や間伐材製品を採用いただきましたが、調達や製造の過程によりどうしても価格が「普通」の紙よりも割高になってしまい、エシカルなものでも、その価格から敬遠されるということも珍しくありませんでした。

しかし、特にこの4年ほどで社会の意識は大きく変化していると感じています。企業も個人も「購入する」ことへの責任を考え、「価格」だけではない「価値」を求めることが増えています。SDGsの浸透とともに「何かできることをしたい」と相談を受けることも増えました。

そこで、私たちは新しく「選択してもエシカル、選択しなくてもエシカル」というモットーを掲げました。エシカルな製品/エシカルでない製品をお客様に選んでもらうのではなく、わざわざ選ばなくても自然とエシカルな製品を使っている…というものです。その後、このモットーをさらに推し進めるため、2025年までに当社規格品の95%をエシカルな製品にするという具体的な数字を設定し、この実現を目指しています。

私たちは、お客様の「何かできることをしたい」という声に、当たり前のように応えられている、そんな企業でありたいと思っています。「普通」の名刺・封筒が、エシカルなものになるように、これからも、地球・社会・経済・人を大切に、豊かな未来に向かって自分たちにできることをやるという軸を忘れずに、製品やサービスをお届けしていきたいです。

Interview ALL