・―・―・―・―・―・―・―・―
【エシカル・コンシェルジュ名鑑】
#24 滋賀のエシカルといえば!?
ライターや団体の代表として活躍する\ Sariさん/
・―・―・―・―・―・―・―・―
「エシカル・コンシェルジュ名鑑」では、日本全国・世界各国にいるエシカル・コンシェルジュを紹介します。講座を受講したきっかけや、職種、興味のある分野は人によって様々です。どんな仲間がいるのか、どんな活動をしているのかぜひ参考にしてください。
第24回目は、11期修了生のSariさんです。講座での学びをライターとして活かし、地元・滋賀からエシカルな情報を発信しているSariさん。ライターにとどまらず、マルシェ出店や団体設立など、活動のフィールドを次々と広げています。その軽やかな行動力に、勇気をもらう方も多いのではないでしょうか。今後のさらなるご活躍に注目です。
::プロフィール::
Sari
幼少の頃から途上国の格差問題に関心を持つ。現在はエシカルライターとして様々なメディアに寄稿し、またエシカルセレクトショップを運営してマルシェ出店する他、滋賀エシカルコミュニティを立ち上げ、「やさしく、たのしく、エシカルに」をモットーに、みつろうラップのワークショップや環境美化センター見学ツアー、援農体験などのイベント企画運営を通してエシカルを広める活動をしている。プライベートでは一男一女の母。
> Instagram
おすすめエシカル
【食】
Sisters‘favoritesのグラノーラdeキャロブ:滋賀県大津市の女性がプロデュースしている、とっても美味しいキャロブとナッツがたっぷり入った贅沢なグラノーラです。キャロブはモロッコの方からフェアトレードで仕入れ、日本の障がい者の方の事業所で加工されています。
【商品】
美しいびわ湖石けん全身シャンプー&リンス:滋賀県の美容師さんがプロデュースした、琵琶湖を汚さないために誕生したノンケミカルなシャンプーとリンスです。地元の湧水と天然の精油を使用していて地肌も健康になるのでお気に入りです。
第二の人生でエシカルな活動を
私は若い頃からエシカルに興味があり、大学では法学部政治学科で国際政治を学び、学生NPOで平和活動にも参加していました。もっと小さい頃には、地球儀を眺めて「世界にはこんな国があるんだ、いつか行ってみたいな」と夢を膨らませていました。
でも、小学生の時、地球の裏側には清潔な水が飲めない、温かいお風呂入ることができない子どもたちがいることを知り、衝撃を受けました。何不自由なく暮らしていた私にとって、それは大きな学びで、「この不平等をなくす仕事がしたい」と自然に思うようになったのです。
しかし、若くして闘病を経験し、早くに出産を経て子育ても始まったことで、その夢は一度脇に置かざるを得ませんでした。けれど40代になって体調も安定し、子どもも手を離れたことで、「今こそ第二の人生でやりたかったことを実現したい」と思い始めました。
そんな時、Instagramで末吉里花さんの著書『エシカル革命』を見つけ、エシカル協会の存在を知りました。エシカル・コンシェルジュ講座の紹介を見て、「これを受けたら自分の思いが形にできるかもしれない」と思い、11期を受講することを決めました。
エシカルライターとしての道
ライターとしての活動を始めたきっかけは、勤務していたカフェでの出来事でした。当時、店長が私の文章力を評価してくださり、カフェのInstagramの投稿を任せていただいていました。ある日、そのカフェにグルメライターの方が取材に来られた際、店長が「この子、文章を書くのが上手いから雇ってあげてほしい」と推薦してくださったのです。
すると、そのライターの方も快く受け入れてくださり、そこからローカルメディア「LOMORE」のグルメライターとして活動を開始しました。これは、2022年7月のエシカル・コンシェルジュ講座を受講していた時のことです。
もともと文章を書くことが好きだったこともあり、講座修了後は学んだ知識を活かしてライターとして活動しようと決意し、現在は「Yahoo! JAPAN クリエイターズプログラム」でも、滋賀県大津市のエシカルなお店や人を紹介しています。
さらに、滋賀県の情報に限らず、エシカルメディアへの寄稿や基礎知識に関する記事の執筆、講座の紹介など、幅広くライティング活動を展開。「ライター」と「エシカル・コンシェルジュ」という二つの肩書を掛け合わせ、「エシカルライター」として活動を続けています。

「人権は政府の義務」 目から鱗の講座内容
エシカル・コンシェルジュ講座は、どの回も知らないことばかり&とてもハイレベルで脳内がクラクラ、まさに知識のシャワーを浴びるような感覚でした。中でも特に印象に残っているのは、藤田早苗さん(英国エセックス大学ヒューマンライツ・センター フェロー)による「世界から見た日本のヒューマンライツ」の講義です。
人権というと、日本では「思いやり」や「優しさ」が中心に語られますが、本来は「政府が実現すべき義務」であり、国連でも「人が能力を発揮するために守られるべき権利であり、それを守り、促進することは政府の義務である」といったことが定義されています。この考え方を知った時、大学時代に国際政治を学んでいた当時とは全く別角度からの学びばかりで、目から鱗が落ちるような感覚でしたが、すっと腑に落ちました。
さらに、日本の入管施設における非正規移住者の扱いについては、あまりに人権が無視されたひどい実態に心が痛み、日本政府を見る目が変わってしまうほど衝撃的でした。でも、この講座を通して見えなかった現実に向き合い、考えるきっかけをもらえたことは、深い学びとなりました。
11期から15期へ 知識の受け取り方の変化
現在(2025年7月初旬)も、第15期の講座を受講中です。11期とは違う講師の講座があり、同じ講師の方でも情報がアップデートされていました。京都のアウトプット会では近くにお住まいの方とリアルな繋がりができましたし、京都のフィールドワークでは里花さんにもお会いできて、11期の時とはまた違う価値をたくさん感じています。

里花さんとフィールドワークにて。シルクのスカーフに環境負荷が低い「新万葉染め」を用いた伝統的な絞り染めを体験しました
里花さんは私がやりたいと思っていたことをまさに実現されていて憧れを持っていたので、お会いできた時はとても嬉しかったです。また、11期では何も知らずに講座を受けていたのに対し、今はライターとして情報収集や執筆をしているため、より理解が深まっていて情報の受け取り方も違うと感じています。
15期の中では、 滝沢秀一さん(お笑い芸人兼ごみ清掃員)の「いつかゴミを捨てられなくなる日がやってくる?日本のゴミから見えてきた別の問題」が面白かったです。講座の中で、東京のゴミの最終処分場の灰があと50年で満杯になる現実を初めて知りました。
講座の少し後に、大津市のゴミ処理施設見学ツアーを企画し、最終処分場の大量の灰を実際に見て、「ゴミは燃えて終わりではない」という滝沢さんのお話を目の当たりにしました。そして、やはりゴミはなるべく減らさなくてはいけないと強く感じました。
また、ゴミ処理施設の見学ではペットボトルのリサイクルの分別も衝撃でした。ペットボトルはキャップやラベルの付いたものはリサイクルできないため、従業員の方たちが1~3時間ぶっ続けでそれらを手作業で弾いている大変な様子を見て、これはきちんと家庭でキャップとラベルを外さなくてはと改めて意識が高まりました。

ゴミ処理施設見学ツアーの様子
conpeitoで広がった新たな可能性
11期を受講後の2024年には、well-beingなライフスタイルを送る人を増やし、三方良しの社会の実現に向けて活動する、女性コミュニティから生まれた「株式会社conpeito」の「HOMOSAPI塾」に参加しました。HOMOSAPI塾は、自分自身の在り方や社会の流れ、well-beingなどを学びながら、これからの自分・町の未来に向けて仲間と対話を重ねるコミュニティラーニング型の塾です。
コミュニティ内でイベントに参加したり、仲間同士で交流や応援し合ったりすることで、次世代に渡す世界を少しでも良くしていくことを目指しています。その中の学びで、「ライターだけではなく、もっと活動の幅を広げたい」と思うようになりました。
もともと「お気に入りのエシカルグッズに囲まれたお店がしたい」という夢があったので、まずはマルシェに挑戦してみようと思い、今年5月に「エシカルショップSarico」として初出店を果たしました。以降、知人の繋がりをきっかけに、月1,2回ペースで出店を続けています。ライターとしての発信ももちろん大切ですが、マルシェでは直接お客様と会話ができ、その場でリアクションがもらえるので、やりがいを感じやすいです。

「エシカルショップSarico」出店の様子
ライターとして記事を書いたりSNSで発信したりすることで知らないところで誰かに影響を与えられているかもしれませんが、反応が見えにくい分、目の前の人や周囲の人が、日常のちょっとした会話や行動を通じて、ちょっと変わってくれること──それが私にとっては嬉しくて原動力になっています。
さらに今では、conpeitoのコミュニティ内で、京都のフェアトレードショップ「シサム工房」やゼロ・ウェイスト・スーパーマーケット「斗々屋」に行くツアーや、近くの有機農家さんの援農体験イベント、プラスチックフリーアドバイザーの方と「みつろうラップ」のワークショップを企画したりしています。
「滋賀エシカルコミュニティ」の立ち上げと「MLGs案内人」就任
次第に団体として活動を進めたいという思いが強まり、株式会社conpeitoの取締役でもある藤橋優希さんと「滋賀エシカルコミュニティ」を立ち上げました。優希さんと知り合って、色々な話をする中で、もっとエシカルを広めたいという話になり、私以上にアクティブにエシカル活動に取り組まれている優希さんとならやっていけると確信を持てました。
また最近では、滋賀県が運営するMother Lake Goals(以下MLGs)という組織の案内人にも就任しました。MLGsは琵琶湖版のSDGsとして、2030年の環境と経済・社会活動を繋ぐ健全な循環の構築に向け、琵琶湖を切り口として独自に13のゴールを設定しています。
MLGsでは、一人ひとりが自分の思いから行動すること、人々が互いに知り合い、学び合い、協力しあうことを大切にしていて、そのきっかけを作るのが「MLGs案内人」の役割です。具体的な活動はこれから始まるところですが、今後さまざまな形で貢献していきたいと思っています。
団体を立ち上げたことで、少しずつ活動に目を留めていただけるようになり、今後はもっと沢山の人に参加してもらい団体を大きくしたいと思っています。まだまだイベントは小規模で、参加者は数人なので、今後の目標は、滋賀でエシカルに興味や関心を持つ人をもっと増やすことです。
先日、団体のInstagramのアカウントを作って、まずは自分たちがどんな人間か、どんな思いで活動しているのか知ってもらおうと思い、Instagramライブを行いましたが、どうやったらもっと色んな人に興味を持ってもらえるかが今後の課題です。
これからは、映画上映会やフェアトレードタウンの推進、環境団体や大津市との連携、できれば、エシカル・コンシェルジュ講座で学んだことを活かしてセミナー開催などもできたら良いなと思っています。今後は「滋賀のエシカルといえばSari」と認識されるような存在を目指してより一層頑張っていきたいと思います。

滋賀エシカルコミュニティ副代表の藤橋優希さんと
文:大信田千尋(一般社団法人エシカル協会)
2025/9/3